日本のサービス業の労働生産性は米国の約半分(50.7%)――日本生産性本部の調査でこんな事実が分かった。小売業などは米国の4割未満という大差をつけられ、欧州3カ国も下回っている。
労働生産性とは、労働1時間当たりの付加価値額を指す。調査では2015年時点のデータを分析し、米国、英国、ドイツ、フランス――の4カ国と比較した。
サービス業を分野別にみると、化学(101.4%)は米国を上回ったが、運輸業(47.7%)、宿泊・飲食業(38.8%)、卸売・小売業(38.4%)などは大幅に下回った。同本部は「経済に占めるシェアの大きな産業では、日米格差が極めて大きい」とみている。
製造業ではリーマンショックを機に日米格差が縮小しつつあるが、それでも米国の67.4%にとどまっている。分野別にみると、金属製品(85.2%)、建設業(73.0%)は日米格差は小さかった。格差が大きかったのは電気・ガス・水道などのインフラ分野(33.0%)。
欧州の3カ国と比較すると、日本のサービス業の生産性はドイツ、フランス、英国の約70%程度。製造業の生産性は英国と同水準だったが、ドイツとフランスをわずかに下回った。
日本の労働生産性は、まだ欧米諸国には及ばない――という厳しい現状が浮き彫りとなったが、調査では「一見するとネガティブな結果だが、生産性の向上を通じた経済規模拡大の余地が日本に残されていることを意味する」とし、政策の検討を呼び掛けている。
調査は東洋大学経済学部の滝澤美帆教授が担当した。
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