巨大不動産企業、日本郵政の採るべき道は?:小売・流通アナリストの視点(2/3 ページ)
ここ数年、主要ターミナル駅前にある中央郵便局が再開発されている。国内有数の優良不動産を保有する企業として、日本郵政の採るべき戦略とは――。
日本郵政グループの巨大な不動産事業
横浜駅東口の「ルミネ横浜」のすぐ横にある横浜中央郵便局は、とても便利な郵便局ではあるが、見るからにもったいない使い方をしている。
反対側の西口で26階建ての再開発ビルを建てている日本有数のターミナル駅に、3階低層建ての郵便局と奥には仕分け配送センターが陣取っている。ここを高層化して、配送センターを道路交通の便の良いところに移したら、相当な商業サービスの集積ができるのに……。と思ったら、まさにそのような再開発の構想を準備中であるようだ。そのため、既に配送センター等の物流機能を海沿いの首都高沿いの神奈川郵便局に移して、これから、どのように再開発するかを関係者と協議しているという。
かつて、鉄道が郵便物流の基本であった昔、中央郵便局(集配拠点も兼ねている)は、その地域の中心駅前立地を確保しているのが普通だった。時代が変わって、配送拠点は中心駅のそばにある必要はなくなり、各地で中央郵便局は再開発されつつある。
東京駅のKITTE、JPタワー名古屋、KITTE博多など、ここ10年で元中央郵便局の駅前再開発が少しずつ進んでいる。こうした再開発の余地を持った郵便局は、横浜をはじめとする全国の大都市や首都圏の鉄道ターミナルの周辺には、相当な数があるとみられ、実際にこうした再開発のプランが具体的に議論されているケースは増えているらしい。日本郵政グループが民営化されたことの評価についてコメントする立場にはないが、こうした再開発が真剣に議論されるようになっていくのなら悪いことではないような気がする。
日本郵政グループの所有不動産は、18年3月期の開示データによれば、簿価ベースで2兆7000億円を上回る。不動産の物件明細までは開示されてはいないが、郵便局のゆうゆう窓口を持つ郵便局を一定規模の不動産物件と想定して検索すると、都内だけで90件ヒットする。その立地情報を1つ1つ見ていくと、商業施設向きのターミナル物件だけではなく、都内のマンション用地としても再開発余地のある物件がかなり多い。
日本郵政グループは、国内有数の優良不動産を保有する企業であり、この資産を活用することで相当な不動産事業を構築する経営資源を持っている。思い起こせば18年3月、日本郵政グループは、日本郵政不動産を子会社として設立し、新たな事業の柱とすることを目指すと発表した。これから先行きが厳しい郵便事業を支えるには、これまでに蓄積した不動産という経営資源を活用するのはリーズナブルな結論だろう。
ただ、不動産事業は、優良な不動産を膨大に保有していたとしても、「数件の賃貸物件しか運営したことがない素人大家さん」でも収益を上げられるといった甘いものではない。この事業には、高いノウハウを持った企業とのアライアンスが必ず必要になるはずだ。
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