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「40年で黒字」が難しい、阪急・大阪空港線 どうすれば実現できるか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)

新線計画がにぎやかな大阪近辺で、国土交通省が事業採算性の調査結果を発表した。なにわ筋線の開業を踏まえた接続路線については良好。ただし、伊丹空港と阪急宝塚線を結ぶ路線は40年間で黒字転換する見通しが立たないという。国内線航空利用者にはガッカリする結果となった。

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採算性が課題、どうすれば建設できるか

 「大阪空港線」は、投資効果が高いけれども採算性が悪い。みんなの役に立つけれど自分は損ばかり、という犠牲的精神に満ちたプロジェクトだ。新路線の建設に関しては珍しいパターンだけれども、鉄道では珍しくない。地方ローカル線で、赤字にもかかわらず存続している路線は、沿線の自治体が便益を認めているからで、その便益に見合う範囲で鉄道に対して運営補助を実施している。税金の投入だから、そこをきちんと説明しないと、納税者も、地方交付税を交付する国も納得しない。

 ただし、厳密に地方ローカル線で費用便益比を計算すると、果たしてどれだけの鉄道が生き残れるかは心もとない。地方の鉄道路線の場合、建設費が償却済みだから、便益比は良い数字になりやすいとも言える。

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大阪国際空港と阪急宝塚線の位置。曽根駅と空港ターミナルを黄色の点線で結んでみた(国土地理院地図・空中閲覧サービスより写真を加工)

 さて「大阪空港線」の課題は事業採算性に絞られる。ここをクリアすれば国の補助金を得られ、建設可能な条件が整う。では、どうすれば採算が取れるか、という話になる。これは単純な商売の話で、いかに費用を下げて売り上げを増やすか、という話だ。

 費用を下げるという部分では、建設費と運用コストをいかに下げるか。建設費について、国交省は約700億円と見積もっている。この構想が2017年9月に報じられたときは、建設費用は約1000億〜数千億円と書かれていた。路線長は約4キロ。地下鉄の建設費用相場としては1キロ当たり約200〜300億円、駅の建設費用も同額程度だ。4キロで1駅の延伸だと、確かに最低でも約1000億円となる。それが約700億円と少なく見積もられた理由は、単線の整備を前提にしたからかもしれない。もし、複線として約700億円と見積もられた場合は、単線の整備に切り替えると下げられる可能性がある。

 総費用の計算に車両コストは含まれていないから、中古車両を使って安く上げるという方法は使えない。しかし、運行会社の阪急電鉄が、さらなる省エネ車両を開発して投入するとか、乗客が少ない時間帯で短い編成にするなど、運行面のコスト削減は可能だろう。新線区間だけでもワンマン運転とし、人件費を削減するという方法もある。大阪国際空港駅を無人駅とし、完全自動化する方法もあろう。

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