なぜオジサンは「孤独」の犠牲者になりやすいのか:土曜インタビュー劇場(ぼっち公演)(4/6 ページ)
会話をあまりしなくて、困ったときに頼れる人がいなくて、近所付き合いもしないオジサンがいる。こうした「孤独」な状況になぜ追い込まれたのか。『世界一孤独な日本のオジサン』の著者、岡本純子さんに話を聞いた。
孤独に悩んでいるのは「オジサン」
岡本: 世界で孤独のリスクが訴えられているのに、日本は逆行していますよね。例えば、書店に足を運べば、タイトルに「孤独」が入った書籍がたくさん並んでいます。ページをめくると「素敵な人はみな孤独」「孤独のチカラはスゴいんだよ」「孤独こそが最強だ」といったことが書かれている。こうした書籍を手にする人は、自分の気持ちに折り合いを付けようとしているのではないでしょうか。「自分は孤独を感じているけれども、本にはそうした状況は悪くないと書かれている。だからいまの自分の状況はいいんだ」と。
孤独が美化されているので、独りのままでいいんだ、寂しくてもいいんだと感じてしまう。でも、本当にそれでいいのか。孤独にはさまざまなリスクがあることをきちんと認識しておかなければ、将来、孤独に苦しめられるかもしれないのに。
土肥: 現在、孤独に悩んでいるのはどういった人が多いのでしょうか?
岡本: オジサンですね。OECDの調査によると、日本人男性の16.7%が「友人や同僚もしくはほかの人々と時間を過ごすことができない」ことが明らかに。この数値は、21カ国の男性中、最も高い。また、ロンドン・スクール・オブ・エコノミストの研究者は「50〜70歳の日本人の多くが孤独を感じていて、特に男性は重大な問題だ。男性の場合、『仕事』か『家庭』かの選択肢しかなく、配偶者やパートナーがいるかいないかで人生の満足感や健康が大きく影響を受ける」と分析しているんですよね。
65歳以上の男性は、会話の頻度が低く、困ったときに頼れる人がいなくて、近所付き合いをしていない、といった調査結果があります。また、40〜60代男性の自殺率が高いデータもあります。
土肥: データに追い詰められそうですが、そもそもなぜオジサンは孤立するのでしょうか?
岡本: 「コミュニティ」と「コミュニケーション」に問題があるのではないでしょうか。日本の場合、労働文化がかなり影響していて、会社に就職して定年まで同じところで働き続ける。村社会の中でずっと生きていると、その場所を奪われたときに対応するのが難しくなるんですよね。
土肥: あっ、でも、いまは65歳まで働く人が増えていますし、定年後も違う会社で働く人が増えているような。
岡本: おっしゃる通りですが、問題点も多い。60歳になると待遇が下がって、嘱託や非正規雇用で働かなければいけません。そのような制度の中で、やりがいを失っていくオジサンが多いんです。若い人から邪魔者扱いされ、自分の存在価値を見失う。さらにやる気を失うといった負のスパイラルに陥ってしまうケースが目立ってきました。
土肥: うーん、サラリーマンにとって職場を失うことは、ものすごく大きいことなのか。
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