なぜオジサンは「孤独」の犠牲者になりやすいのか:土曜インタビュー劇場(ぼっち公演)(5/6 ページ)
会話をあまりしなくて、困ったときに頼れる人がいなくて、近所付き合いもしないオジサンがいる。こうした「孤独」な状況になぜ追い込まれたのか。『世界一孤独な日本のオジサン』の著者、岡本純子さんに話を聞いた。
オジサンでも活躍できる場
岡本: オジサンが失いたくないのは仕事ではなくて、名誉や自分の存在価値ではないでしょうか。学校を卒業して、ずっと同じ職場で働いてきました。なぜそうした働き方をしてきたかというと、承認欲求を満たされてきたからなんですよね。上司に評価される、同僚から認められることが、生きがいと感じている人は多いはず。
ちなみに、米国には定年という制度はありません。多くの人は65歳前後でリタイヤしますが、業績や健康状態などに問題がなければ、働き続けることができます。何歳からでも、何歳まででも、スキルがあれば仕事を続けることができます。
土肥: 一方の日本には定年という大きな壁がある。一定の年齢になれば「はい、終了」という感じで、スキルがあっても、健康であっても、本人にやる気があっても、働くことができない。働くことができても、大幅に給料が下がってしまう。そしてやる気が失われて、朝から図書館に通うことに。でも、定年して20年も30年も図書館に通い続けるわけにはいきません。なにかいい方法はないですか? そうだ! オジサンでも活躍できる場があればいいのでは?
岡本: 日本には第三の場所がほとんどありません。女性はコーヒー1杯で延々としゃべることができる。ああでもない、こうでもない、そうだね、こうだねと。一方の男性は違う。スポーツができるところ、趣味ができるところ、仕事ができるところといった感じで、共通の目的がなければコミュニケーションをとることが難しい。であれば、オジサンが集まる目的と場をつくればいいのではないでしょうか。
例えば、英国。男性の孤独対策として「Men's Shed(男の小屋)」という場があるんですよね。ここで何をするのか。部屋に木材やドリルなどDIYに必要な工具がそろっていて、そこでオジサンたちは作業ができるんです。私も現場に行ったとき、オジサンたちが「このネジはどうしたらいい?」「そこはこう削ったらどうか」といった会話をしていました。こうした場所は、英国で400カ所以上もあるんですよね。
日本でもこうした場をつくれるはず。例えば、商店街。シャッターが下りている店舗で、日本版「Men's Shed」のような仕組みを導入してみてはどうでしょうか。
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