「セクハラ大国」の汚名を返上するために、どうしたらいいのか:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
前財務省事務次官・福田淳一氏のセクハラ問題は海外でも広く報じられている。どのように対処していけばいいのか。いま一度、ハラスメントに対する認識を見つめ直すべきだ。
根強く残る「ハラスメントの素地」
飲みの場も仕事の一環という意識がまだ残る日本の場合は、問題は勤務時間外にも広がっている。そもそも夜遅くに、取材対象者から呼び出されて出ていかなければいけない状況こそ変えなければいけない部分であろう。誘いを断ったら会社や同僚に悪影響を及ぼすかもしれないと心配して、断れない相手からの電話と要求に応じなければいけないという環境は、それ自体がハラスメントだ。
それを理解していないから、今回の福田前次官のように「好きだから飲みに来るのだろう」という勘違い発言が出たり、騒動自体が記者による「ハニートラップ」だというトンデモ意見が散見されることになってしまう。
日本はそんな「ハラスメントの素地」が今も根強く存在する国だ。
もう1つ言うと、公開されたテープで女性記者の声が含まれたものを出せという批判もあるが、それなら女性の声で本人が明らかになり匿名でなくなる。それを出せということ自体、セクハラを告発できない「素地」を作ることになる。
男性も女性も、セクハラという言葉をいま一度見つめ直すべきだろう。そこから始めない限り、米国に並ぶ「セクハラ大国」の汚名を覆すことはできないだろう。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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