71億円の減益ながら表情の明るいホンダ:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/3 ページ)
大型連休前にホンダの決算発表会が開催された。営業利益は8335億円で、前年度に比べて71億円のダウンとなった。しかし会見に臨んだ倉石副社長の表情は明るい。質疑応答では笑顔を見せる局面もあった。
地域別の星取表
当年度、目覚しかったのはインド、ベトナム、タイでの二輪事業の売り上げ増加であり、ホンダではこれを160ccのスポーツバイク「X-Blade」とインド最量販スクーターである「Activa」の投入によるものと説明している。
四輪はどうだろう? まずは日本マーケットからだ。国内販売台数は72万5000台で昨対比102.0%。特にN-BOXが3年連続で軽四輪新車販売台数第1位を獲得したほか、2月にマイナーチェンジしたヴェゼルも好調だ。
ホンダが強い米国マーケットでは163万9000台と昨対比99.6%で微減ながらほぼ横ばい。米国の景気がピークアウトすると予想される中で来年以降の推移が注目されるところだ。
躍進と言えるのが中国。145万1000台の過去最高で昨対比は111.5%である。
もやもやするのは営業利益率の低さで、5.4%に止まる。例えばスバルがお祭り騒ぎのように売れた15年にはこの営業利益率で17.5%を叩き出した。さすがにこれは異常な数字だが、利益率の優等生であるトヨタは、逆風さえ吹かなければ10%以上をコンスタントに維持し続けている。ここのところ日産とホンダは5%をクリアするあたりでウロウロしている印象が強い。しかもホンダの次年度見通しではこの利益率を4.5%と予測しているのだ。
利益率の改善は急務
ホンダはこの利益率をどう改善していくつもりなのか、まずは生産能力に対する生産台数の効率の見直しだ。生産能力が限界に達しつつある工場と、余力が生かしきれていない工場がバラついている。優秀なのは中国で、現地資本との合弁会社である中国の各系列会社では順調に成長中でホンダブランドの7機種が10万台超えを記録した。
1723万台の市場規模がある北米では、シビックのモデルチェンジが好首尾に推移している。これに加えてアコードにハイブリッドが加わることで乗用車ラインを守りつつ、好調なライトトラック・マーケットに対しては、CR-V、パイロット、アキュラRLXで戦っていくことになる。すでにフォードは米国市場でセダンの販売不振から、セダン撤退を発表しているが、果たしてこのセグメントに属するシビックとアコードがどうなるかが大きな潮目になる可能性がある。フォードの撤退によって、残ったメーカーの分け前が増えるのか、それともそれがセダン衰退の引き金をもう一段引くことになるか。これはホンダだけの問題ではなく日本メーカー全社が共通に持つ問題だ。
グローバルで見てお荷物化しているのは英国工場である。ホンダの長年の課題の1つが欧州マーケットでの弱さだ。17年度のマーケットごとの年間販売台数とシェア率を見てみよう。
日本 69万6000台 13.5%
北米 190万2000台 36.9%
欧州 14万1042台 2.7%
アジア 216万6000台 42.0%
その他 25万2000台 4.9%
合計 515万7042台 100.0%
北米とアジアへの依存が高く合計で78.9%にもなる。逆に欧州はあれだけ長い間F1でレース活動を行なってブランドを確立してきたはずなのにわずか2.7%しかない。現地生産する意味が希薄である。欧州用に稼働させていても仕方ないので、ホンダはここで生産したシビック・ハッチバックを米国や中国へ輸出することで解決を狙っている。
輸出工場として各国の台数をまとめてスケールメリットを出す作戦だが、依然先行きが不透明なブレクジット(脱ユーロ)問題が影を落とす。米国はともかく、関税引き下げを検討中の中国の出方が習近平首席の発言通りになるとしたら、ユーロからの離脱で関税特権を失うのはあまりにも手痛い。
英国スウィンドン工場はホンダにとって欧州で唯一の四輪車生産拠点であり、2001年に第2工場を作りながら長らく遊ばせてきた。実績だけで言えば切りたい工場だろうが、これを切ったら欧州の拠点がなくなり、またブレクジットで先行き不透明な英国工場には買い手が付きにくいことから考えて、なかなか踏ん切りがつかないのだろう。また生産能力が25万台という中途半端さも苦しいところだ。それでもホンダは15年に約350億円の追加投資をして工場の近代化を進め、輸出工場への転換を図ったのだ。
紆余曲折がありながらも、グローバルで570万台の生産キャパシティの稼働率は90%を超えた。何よりも乾いた砂が水を吸うようにクルマが売れていく中国マーケットで台数を伸ばして、諸々を帳消しにしてくれていることが大きい。
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