「夢」の功罪 貧困・奨学金記事を炎上させるもの:真のキャリア教育(3/3 ページ)
貧困に苦しむ家庭や、そうした環境下で育った若者にとって、大学進学やそのための奨学金に関する記事が人気です。一方、そうした記事は自己責任論や「甘い」といった批判も呼びやすく、本質の議論がずれているのではないでしょうか。
(5)三食ケーキを食べさせないのが真のキャリア教育
私のキャリア講座ではお金の話が満載です。別にFP的な資産運用などではなく、人生のいつごろ、どんなこと(ライフイベント)が起こり、どれだけお金がかかり、それを決めるためのキャリア決定では何を考えるべきかと学生に問題を投げつけます。
ほとんどの学生は何も考えることなく、卒業すれば就職する、就職すればいずれ結婚したり出産したり、昇進・昇給があると何となく思っていることが多いといえます。しかしそもそも就職しても会社が倒産したり、リストラされたり、病気になったり、生涯独身で天涯孤独になる可能性は考えなくて良いほどの例外なのでしょうか?
一流大を出て大企業に就職できたものの半年足らずで退職してしまい、その後30代まで次々転職を繰り返した結果、40歳を過ぎたら全く採用されなくなり、日々の暮らしにも困窮する人もいます。貧困家庭の子供が、貧困を再生産するリスクがきわめて高いキャリアに進むことを、「子供の夢の実現」などと称して放置したり後押しするのが教育でしょうか? 子供の知識でキャリア選択すれば、リスクなど考えずに「夢」とか「好きなこと」のような非現実的で限られた知識だけで人生を決めてしまう恐れは放置されます。
大人の責任として、子供が好物だからといって三食ともケーキばかりを食べさせるようなものです。「夢」と「現実」の違いや、好きなことには必ず高いリスクが付きまとう覚悟をきちんと教えられるのか、真のキャリア教育こそ貧困キャリア問題に有効だと考えます。(増沢隆太)
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