JR北海道の“大改造”構想 「新・新千歳空港駅」「ベースボールパーク新駅」:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)
新幹線札幌駅が決着したJR北海道に新たな動きがあった。北広島市のベースボールパーク新駅構想に引き込み線方式の大胆案、新千歳空港駅も大改造構想が立ち上がる。JR北海道だけではなく、北海道全体にとっても良案だ。
しかし、報道された引き込み線案も良いアイデアだ。費用と臨時列車のダイヤに工夫が必要だけど、観戦客を他の乗客と完全に分離できる。臨時列車用に快速エアポートより長い編成の車両を待機させておける。車両も、当面は臨時列車用の余剰車両を使い回せる。年間試合数に対して過剰な投資に思われるかもしれないけれど、ベースボールパークは余暇施設、商業施設もあり、通年営業できる。
イメージとしては埼玉県所沢市の西武球場前駅に近い。西武鉄道狭山線の西武球場前駅は、もともとは狭山湖駅で、単線の狭山線の終着駅。遊園地や人工降雪のスキー場利用者が訪れる程度、西武遊園地へ向かう山口線との乗換駅だった。しかし、西武鉄道がライオンズ球団を取得して西武球場(現・メットライフドーム)を建設するにあたり、狭山線の駅の線路を2本から6本に増やした。平日は4両編成が15分間隔で走るローカル線だが、野球開催時は10両編成の電車がプラットホームにぞろりと並び、次々に発車する。鉄道の輸送力を発揮する壮観な眺めである。
西武球場前駅は鉄道輸送の依存度が高い。北広島市のベースボールパーク新駅はクルマやバスなどの交通も整備されるから、ここまで大きな施設にはならないだろう。しかし、観客輸送に対する意気込み、準備としては参考になるはずだ。鉄道に限らず、公共交通で球場に行ければ、観戦中にビールを飲める。鉄道の需要も大きいはずだ。
一方、代案として示された北広島駅プラットホーム増設は、ベースボールパークから徒歩20分、あるいはシャトルバス運行という形で、鉄道を生かす形にはならない。ちょっとバスに乗って乗り換えて、ということなら、はじめからバスで札幌と直通した方がいい。観戦客にとって「仕方なく電車に乗ろう」という形では支持されない。北広島駅で対応するというなら、ベースボールパークと北広島駅の間に「歩きたくなる歩道」あるいはシャトルバスに「乗りたくなる工夫」が必要だろう。試合を振り返る解説を聞けるバスであれば、乗ってくれるかもしれない。しかし乗車時間が短くて現実的ではない。
引き込み線案に難点があるとすれば、札幌方面の需要しか満たせない。新千歳空港からベースボールパーク新駅に行くなら、どこかの駅で折り返す必要がある。私は野球に詳しくないから、道外からの観戦需要が分からないけれど、多数であれば本線駅案がいい。少数であれば引き込み線案とし、空港からの観戦客は北広島駅から徒歩、シャトルバスで対応でいい。新千歳空港からの来客にとっては折り返し乗り換えとの比較になるから、北広島駅利用も悪くないだろう。
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