JR北海道の“大改造”構想 「新・新千歳空港駅」「ベースボールパーク新駅」:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)
新幹線札幌駅が決着したJR北海道に新たな動きがあった。北広島市のベースボールパーク新駅構想に引き込み線方式の大胆案、新千歳空港駅も大改造構想が立ち上がる。JR北海道だけではなく、北海道全体にとっても良案だ。
新・新千歳空港駅
現在の新千歳空港駅を改修し、新たな新千歳空港駅を作る。ややこしいけれど仮に「新・新千歳空港」としておこう。このアイデアは、北海道新聞の5月2日の報道で明らかになった。さらに3日、北海道建設新聞が詳しい図面入りで紹介している。実現すれば、千歳空港最寄り駅としては3代目だ。
初代の千歳空港駅は現在の南千歳駅だった。千歳線の本線上にあって、後にこの駅から分岐する石勝線が開業した。その結果、札幌と帯広・釧路方面を結ぶ列車も千歳空港駅を経由できた。函館〜石勝線方面間の特急は、函館〜千歳空港〜札幌〜千歳空港〜石勝線釧路方面という珍しいルートになった。直通客に対して千歳空港〜札幌間の運賃は計算しないという特例もあった。
千歳空港駅は北海道の鉄道が「函館基準」から「札幌・千歳中心」になる転換点となった。しかし、千歳空港ターミナルはかなり離れており、全長約250メートルの歩道橋で連絡していた。この時代に私も2回利用したけれど、動く歩道もなく、つらい移動だった。利用者も少なくて、誰も使わない荷物用カートが並んでいた。
千歳空港は航空自衛隊千歳基地と共用だったため、旅客と貨物の増大に合わせて民間機専用の滑走路とターミナルビルを建設した。これが1992年に開港した新千歳空港だ。その新ターミナルビルに直結するために現在の新千歳空港駅が作られた。千歳線から分岐する形となったため、新千歳空港駅と石勝線との直通はなく、南千歳駅で同一プラットホーム乗り換えという対応策がとられた。
「新・新千歳空港駅」案は、南千歳駅から分岐する線路を複線化し、新千歳空港駅の先に線路4本、プラットホーム3面の新駅を作る。新千歳空港駅の行き止まり型に対して、新・新千歳空港駅は線路4本のうち2本は通り抜け構造とし、千歳線の室蘭方面に合流する。さらに、合流点の手前で単線を分岐して、石勝線に合流させる。その結果、札幌方面、釧路方面、室蘭(函館)方面の全ての特急列車が新・新千歳空港を経由できる。
空路と鉄路が一体となる構造で、来道観光客にとってとても便利になる。新千歳空港は訪日観光客が増加し、17年は329万人に上った。今後、オリンピック・パラリンピックの誘致に成功すると、来道観光客はさらに増える。そして、このままでは鉄道利用客は札幌に集中する。これを分散し、北海道を周遊観光型に切り替えるためにも、新・新千歳空港駅は重要だ。そして、プラットホームを長くすれば、快速エアポートを長編成化してベースボールパークの輸送にも対応できる。その場合は千歳線本線上にベースボールパーク新駅を作っても差し支えない。
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