本当に、ATMで硬貨を取り扱う必要があるのか:再考の余地(2/3 ページ)
厳しい経営環境を迎えている金融機関のコスト削減の対象の1つがATM。本当に今のような高機能、特に硬貨の取り扱いが必要なのだろうか。メガバンクによる共通化を機に、再考の余地はありそうだ。
フォーカス戦略を売りにする弊社では、過去にこうした割り切り発想の製品・サービス開発の支援をしたことが何度かある。しかし単にそのまま依頼事項を具現化すればよいとは限らない。「硬貨取り扱い」機能削減により減らせるコストがある程度見込めても、その利便性を失うことで多くの利用客を失うことになっては元も子もないからだ。
ではATMで硬貨を取り扱わないとなると、利用者(一般生活者、取引先)が本当に困るケースがどれほどあるのだろう。少し頭の体操をしてみよう。
一般生活者にとっては現金の引き出しや預け入れの際に硬貨取り扱いは特段必要ではなく、むしろ各種の支払いに応じる「振込」の際に硬貨を含むというのが現実的に少なくないパターンだろう。つまり振込額と同じ、端数を含んだ金額をATMに預け、その全額を振り込むというものだ。
しかしこれとて、預金者であれば自らの口座からの「振込」を指示すればよいだけのことだ(つまりキャッシュカードを読み取る必要はある)。その際に残高に不安があれば現金を追加で預けてもよいが、それは何も端数まできっちり同額である必要はなく、お札だけで事足りるはずだ。
預金者でない行きずりの一般生活者には、彼らが預金を持っている金融機関か、コンビニ辺りで振り込んでもらえばいい。何も彼らのために「余分な機能」を維持する必要はない。
では会社やお店といった取引先ならどうか。引き出しに硬貨取り扱いが絶対に必要なケースがどれほどあるのか、これは調べてみないと分からない。確かに、おつりなどで小銭が緊急に必要な店が両替のためにATMに駆け込むケースがゼロではない気がするが(大半の店ではかなり余分に小銭を保管しているというのが現実だろう)、むしろ近所の他の店と「困ったときはお互い様」で両替をし合うほうが、ATMに往復し並ぶ時間が節約できる分だけ現実的な気もする。
また、「振込」の際に硬貨を含む必要があるかについては一般生活者と同じだ。取引先なら確実に預金口座を持っているのだから、そこから振り込むのを基本にすればよく、残高に不安があるなら余分にお札で入金してもらえばよい。
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