「期待の星」の女性ITエンジニアが辞めるわけ:中堅SIerの現場から(2/3 ページ)
また女性ITエンジニアが辞めた。女性が辞める現場で何が起こっているのか。中堅SIerに勤務するSEが“現場”をレポートする。
山田の姿に木下は冷ややかだ。
「妊婦が徹夜で働いたり、子どもがいても終電まで働いたり、はっきり言って、頭おかしいですよ。山田さんみたいにはなれないです。彼女がいることで、この会社でやって行くのは無理だと感じました」
山田の存在が結婚・出産していく上で、ロールモデルになるどころか、障害になっている。社内で「男勝りの女」しか生き残れないと痛感させるからだ。
一方で、会社は長時間労働に対して、何の対策も講じていないわけではない。政府の方針に合わせて、「働き方改革」の施策を打ち出し、有休消化率、残業時間の削減などを目標に掲げている。しかし現場では、「あまり意味がない」と感じられているようだ。
「仕事の量は変わらないのに、休めと言われても、休めないですよね。現場が混乱するだけじゃないですか」というのが木下の実感だ。
子育て支援ではどうか。育児休暇、時短勤務などの制度はある。しかしながら、取得には心理的抵抗があるという。
「育児休暇制度はあるけれど、うちの会社は客先常駐が多いので、現場の理解を得にくいんですよね。1回出たら、元の現場には戻りにくいでしょう。だから、出産したら辞めようと思っていました」
制度は整備されていても、実際の「現場の理解」が追い付いていない。出産したら、会社を続けるのが難しいと感じさせている。
辞めた女性はどこに行ったのか
「先輩みたいな、入社10年目を超えた男性社員だって、デスマーチばかりじゃ、このままずっとやって行く自信はないんじゃないですか?」――木下は後輩ながら鋭いことを言う。開発の現場が疲弊していることは確かだ。
では、辞めた女性社員はどこに行ったのか。何人かが“新天地”として同じ業界の会社を選んでいた。アクセンチュアである。元々、コンサルティング・ファームだが、近年はシステムの開発業務に力入れており、従業の数を3年で2倍の1万人近くにまで増やしており、IT人材の流入先となっている。
「アクセンチュアに転職します」と打ち明けられた時、正直に言えば「大丈夫なのか」と感じた。激務で長時間労働な会社として、評判がすこぶる悪かったからだ。「転職先として、あそこだけは避けた方が良い」「アクセンチュアに行くと潰れる」――そんな噂話を何度も聞いていた。
“あの”アクセンチュアが働き方改革によって、女性ITエンジニアを引きつけている。私は「信用できない」「額面通り、受け取れない」という気持ちが強かった。
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