600人以上が参加、SPACETIDEで語られた宇宙ビジネスの現在地:宇宙ビジネスの新潮流(3/3 ページ)
日本初の民間による宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2018」が開催。3回目となる今回は「宇宙ビジネスの広がりが、あらゆる産業を巻き込む」をテーマに国内外の専門家が議論した。ダイジェストで紹介する。
国主導から民間ビジネスのフロンティアへ
3つ目の目標が「新たな宇宙ビジネス生態系をつくる」ことだ。来場した松山政司内閣府特命担当大臣が「国主導から民間ビジネスのフロンティアへの変革期」という方向性を示したように、政府および航空宇宙企業に加えて、起業家、異業種起業、プロフェッショナルなど多種多様なプレイヤーの参加と連携が重要だ。
当日最初の「2030年にむけた宇宙産業の将来像形成」パネルでは、政府関係者、大手企業、投資家、ベンチャー企業が登壇。内閣府による宇宙ベンチャー支援策、JAXAが示した新たな民間パートナシップ、スカパーJSATが取り組むスペースビジネスへの転換とNewspaceへの投資、産業革新機構による継続投資姿勢、そしてアストロスケールの挑戦など、「ここから先は切り開いていくことが大事」という登壇者の前傾姿勢に可能性を感じた来場者も多かったのではないか。
日本では従来宇宙と関係の薄かった異業種企業も重要な役割を担いつつある。最後に行われた「他産業の成長ドライバーとしての宇宙」パネルでは、さくらインターネット、ソフトバンク、清水建設、ユーグレナ、日本ラグビー代表の関係者が集まり、宇宙を自社のビジネス活動に実際にどう生かしているのかというプレゼンがあった。
その後、登壇者からはアウトサイダーとしてみた宇宙産業の課題として、事業マインド、地上技術の進展も見越した技術優位性の検討、コンピューティングリソースの活用、新規参入者との外部連携、規制の明確化、ユースケースの提示などがあった。加えて、今後の他産業と宇宙ビジネスとの交流のさらなる促進のためには、分野をまたいだオープンな人材交流が不可欠で、その意味でSPACETIDEのような場は非常に重要とのコメントが複数の登壇者からあった。
多種多様な機関や組織がサポート
以上のような議論が行われたSPACETIDEだが、今回初めて行ったスタートアップピッチでは、新進気鋭の宇宙ビジネス起業家7人がショートプレゼンを行った。こうした新しいプレイヤーのビジョンや情熱やアイデアが宇宙産業の新たな推進力となっていくと期待したい。
最後に、今回は全日本空輸、朝日新聞社、日本航空、スカパーJSAT、慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科、東京放送ホールディングスの民間企業・組織が協賛を、朝日新聞社および三井不動産に協力をいただき、内閣府宇宙開発戦略推進事務局、経済産業省、文部科学省、JAXAに後援をいただいた。
こうした多種多様な機関や組織の支援があったからこそ開催できたカンファレンスだ。今後も参加者の方々とともに、SPACETIDEという場を通じて宇宙産業の発展・拡大に貢献していきたい。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、15年のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。日本初の民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE共同創業者 兼 代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。
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