600人以上が参加、SPACETIDEで語られた宇宙ビジネスの現在地:宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)
日本初の民間による宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2018」が開催。3回目となる今回は「宇宙ビジネスの広がりが、あらゆる産業を巻き込む」をテーマに国内外の専門家が議論した。ダイジェストで紹介する。
軌道・深宇宙分野におけるビジョン
他方、軌道・新宇宙分野では大きなビジョンが提示された。宇宙飛行士でJAXA(宇宙航空研究開発機構)の若田光一理事によるプレゼンでは、地球低軌道は国による開拓フェーズから商業フェーズへと移行中で、「きぼう」からの超小型衛星放出の事業化の紹介があった。他方、国による新たな活動領域開拓の舞台は月へとシフト。月近傍の軌道上への拠点構築や「建てる」「探る」「作る」「住む」といった技術開発例が紹介され、国際パートナーや産業パートナーとの協力が呼びかけられた。
その後に続いた「創造・宇宙経済圏」パネルでは、三菱電機とともに、商業宇宙資源開発を目指すispace、国際宇宙ステーションで科学実験サービスを提供する米NanoRacks、政府向けに政策コンサルティングを行う米Andart Globalが参加して、軌道および深宇宙分野に関する議論がなされた。
宇宙ビジネスの中でも比較的新興である同分野だが、登壇者からはビジネスとして成立させることへの強い意欲とともに、事業計画、政策、投資、顧客ニーズ、国際協力の重要性が語られた。また、政府との連携とともにベンチャー企業がリスクテイクをして新しい事業を開拓することが重要であるとの見方が示された。
世界と日本の宇宙ビジネスをつなげる
SPACETIDEが2つ目の目標としているのが「世界と日本の宇宙ビジネスをつなげる」ことだ。新たな宇宙ビジネスではよりグローバルな動きが広がりつつある。国をまたいだ議論やグローバルな事業展開を目指していくことも期待される。
今回は各パネルに米国からの登壇者が参加した。「宇宙飛行の新時代」パネルでは、小型ロケット開発を行うインターステラテクノロジズ、有翼機開発を目指すPDエアロスペース、三菱重工業、宇宙旅行代理店のクラブツーリズム・スペースツアーズとともに、米国からはジェフ・ベゾス氏が創業者として著明な米Blue Originが参加した。
Blue Originは19年に有人でのテストフライトを行うことを発表し、「宇宙に行く準備はできているかい?」と投げ掛けた。呼応する形で日本勢からは、宇宙旅行の適正価格、潜在需要の大きさ、市場形成のための検証ポイントなどが示された。また、打ち上げビジネスが抱えている射場整備、質の高いエンジニアの確保と人材流動性、グローバルな受注活動などの課題に関する意見交換がなされた。
今回初来日したスペースフロンティア財団のジェフ・ファイギー会長からは、米国におけるNewspace動向が語られた。従来の宇宙産業のあり方を根本から変えてしまうような流れの中、多くのスタートアップ企業の参加によって、技術革新のスピードが加速し、コンスタントに生まれていくであろうということだ。
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