イオンが発売するお値打ちでマダイそっくりな新魚種:亜熱帯に生息(1/2 ページ)
イオンがマダイそっくりな新魚種を発売する。台湾で養殖したものをグループのスケールメリットを生かして仕入れて、低価格を実現した。イオンは今後国際的な認証制度に基づいた養殖魚の扱いを増やすというが、その背景にあるのは?
イオンは「asc認証 いずみ鯛(ティラピア)」を5月30日から全国の「イオン」「イオンスタイル」「マックスバリュ」を含むグループ1300店舗で発売すると発表した。品質の高い養殖魚を安定的に仕入れて、手ごろな価格で販売する狙いがある。
「いずみ鯛」とはスズキ目カワスズメ科の白身魚で、マダイとは生物学上の分類が異なる。アフリカなどの亜熱帯地方に生息しているが、繁殖力が強く、1キロに育つまでのエサの量が1キロ未満で済むことから「養殖魚として非常に優秀」(イオンリテール水産商品部長の松本金蔵氏)という。
実際にいずみ鯛のカルパッチョを試食してみた。マダイそっくりのぷりぷりとした食感と淡泊な味わいがあり、魚名を知らなければマダイと勘違いしそうである。ヨーロッパではすしのネタとしても使用されているというのも納得だ。
価格は100グラム当たり321円(税込、以下同)を想定しているが、「特売日などでは半値にすることも考えている」(松本部長)という。イオンではカンパチやマダイは100グラム当たり500円前後で発売されることもあるが、いずみ鯛は台湾の養殖場で育てられており、イオンのスケールメリットを生かして調達することで低価格を実現した。
いずみ鯛は20年ほど前に日本で発売されたこともあったが「生臭く、あまりおいしくなかったので市場から消えた」(松本部長)。養殖技術の発達により品質が向上したことも、イオンが発売を決断した背景にある。
イオンが取得している2つの認証
「asc認証」とは、「ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)」が管理している認証制度で、水質や生態系への影響を与えないように育てられた養殖魚の普及を目指している。イオンではすでにアトランティックサーモンなど9魚種18品目を発売している。
イオンは「MSC認証」という別の認証制度の鮮魚を22魚種41品目発売している。こちらは、持続可能な漁業を推奨することを目的としたMSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)というNPOが管理している。
イオンは「フィッシュバトン」というMSC認証とasc認証の商品で構成した売場を63店舗で設置している。この関連商品は販売金額ベースでイオン全体における水産物の10%を占めるまでに増えており、この割合は今後も増やす方針だ。
この説明だけを聞くといずみ鯛は「安くてエコ」がウリの商品のように聞こえるが、実はイオンが進める“脱天然”の戦略の一環に位置付けられる。
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