狙いは肉食系男子? 「ドンキ化」したファミマに行ってみた:これは本当にコンビニ?(4/4 ページ)
ドンキのノウハウを注入したファミマの実験店舗がオープンした。商品の品ぞろえや陳列方法はこれまでのファミマからは想像もできないものだった。オープン当日の様子をルポ形式でお届けする。
車いすの客にはやさしくない?
取材している途中、店内のトイレを利用したくなった。トイレに向かったところ、道をふさぐように折り畳み傘を積んだ棚が置いてあった。正確な道幅は計測していないが、車いすで来店したお客はトイレの利用をちゅうちょするかもしれない。スペースを有効利用しようという意図は分かるが、車いすのお客にはやさしくない設計だと感じた。今後の改善を期待したい。
実験店でファミマとドンキが狙うもの
店内を一通り取材したあと、駐車場で行われた記者会見に参加した。今回の実験店舗の狙いを要約すると、次のようになる。
実験店舗は、ユニー・ファミリーマートHDとドンキホーテHDが2017年に締結した資本・業務提携に基づくものである。ドンキホーテHDはすでにユニーとの新業態店を6店オープンさせており、いずれも売り上げや客数を旧店舗から増やすという実績を出している。
ドンキの主力は大型店舗だが、現在、空港内に出店する「ソラドンキ」、駅ナカに出店する「エキドンキ」、日常生活で利用しやすい商品を多く取りそろえた「ピカソ」といった小型店舗を強化しようとしている。今回の実験を通して「狭小店舗運営のノウハウを手に入れる」(ドンキホーテHDの竹内三善執行役員)狙いがある。
一方、ファミマは頭打ちになっている客数をなんとか増やしたいと考えている。特に「女性、若者があまり来てくれない」(ファミリーマート営業本部ライン運営事業部の今木誠部長)という状況を打破するため、ドンキのノウハウを得ようと考えている。広報担当者によると、立川南通り店のお客は40〜50代の女性が多く、ドンキ流の陳列で若者を呼び込みたいと考えているようだ。
ドンキとファミマの実験店舗は全部で3店あり、それぞれ商圏や立地条件などが異なる。実験店舗は、今回の店舗以外に「ファミリーマート大鳥神社前店」(東京都目黒区)と「ファミリーマート世田谷鎌田三丁目店」(東京都世田谷区)があり、目黒の店舗は立川の店舗と同時にオープンしている。
実験店舗の運営を通して、顧客の購買行動などを分析し、他店舗の運営に生かすという。あくまで3店は実験店舗という位置付けで、「ドンキ化」したファミマが全国に広がることはないという。
ドンキは長らく小売業界では“異端”扱いされてきた。それは、ごちゃごちゃした陳列方法や、賞味期限切れ間近の商品を安売りする姿勢が“小売りの常識”から大きく外れたものだったからだ。小売りの覇者であるコンビニとドンキが組む日が来ると誰が想像しただろうか――そんな感慨にふけった取材であった。
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