富豪ランキング“圏外” 日本はなぜ「ビリオネア」が少ないのか:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
2018年版の「ビリオネア調査」の結果を見ると、ビリオネア数で日本はトップ10にも入っていない。なぜだろうか。その背景には、日本の企業文化がある。
企業が“起業精神”を吸い上げる
海外では、日本に富豪が少ないことはどう見られているのか。インターネット上のあちこちのフォーラムや記事などでも議論されている。
例えば、日本は集団を大事にするから、というものや、米国のような個人主義は歓迎されない、といった指摘もある。また背景には日本の雇用文化があり、1つの会社で勤め上げることがいいとする考え方が残っていたり、大きな企業なら組織への忠誠心が強いとの見解もある。事実、以前ほどではないにせよ、職務経歴で転職回数が多いと転職の際にマイナスに作用する場合もあるだろう。
米国で富豪リストのトップに名を連ねるアマゾンのベゾス氏やFacebookのマーク・ザッカーバーグ氏といった人たちは、起業してのし上がってきた人たちだ。だが日本の場合は、社内で勤め上げる人が多いため、アイデアや“起業精神”を企業が吸い上げてしまっているケースがあると指摘する、米国人と思われる人のコメントもインターネットのフォーラムにはあった。
この「Wealth-X」の調査結果には、こんなランキングも。世界で富豪の多い都市ランキングだ。トップ10を見ると、9位はムンバイと深センだった。8位はドバイ、7位はシンガポール、6位は北京、5位はロンドン、4位はモスクワ。日本人としては、トップ3に日本の都市が入っているのを期待してしまうが、結果は、3位はサンフランシスコ、2位は香港、そして1位はニューヨークだった。
残念ながら、日本はランクインしなかった。
もちろん富豪が多いから国として素晴らしい、または都市として優れている、ということではない。ただこのビリオネア調査で、世界的にも裕福と認識されている日本のビジネス文化にある興味深い側面を日本人として再発見できた。また日本が富豪を生み出せない「ダメな理由」をあらためて考えさせられた。
ここまで見てきたように、日本のダメな理由が日本人の気質や企業文化にあるとすれば、来年のビリオネア調査やランキングでも、日本が今年同様に存在感を見せられないのは間違いないだろう。それを確認するためにも、来年の調査に注目したい。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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