畑違いの分野なのにペット事業に参入したシャープの勝算:自社の強みをどう生かす?(1/2 ページ)
シャープは6月11日、ペット事業に参入すると発表した。ペットビジネスのノウハウを豊富に持っているわけではないのに、どうして「勝算あり」と見込んだのだろうか。
シャープは6月11日、犬と猫の健康管理ビジネスに参入すると発表した。ペット関連ビジネスのノウハウが豊富とは思えないが、どんな勝算があるのだろうか。
尿の量で健康状態を把握
まず、猫向け健康管理ビジネスの概要を解説しよう。
シャープは7月30日から「ペットケアモニター(HN-PC001)」(2万4800円、税別、以下同)を発売する。どこにでもあるペット用トイレのように見えるが、飼い猫の尿の量や回数、体重、滞在時間などを計測できるようになっており、クラウドで記録・解析したデータを飼い主のスマートフォンに通知できる。
ペットケアモニターを使うには、専用アプリ「COCORO PET」をスマホにインストールする必要があり、月額300円のサービス使用料が別途かかる。また、多頭飼いしている飼い主向けに、最大3頭まで対応できる「個体識別バッジ(HN-PM001)」(3980円)もそろえた。
このサービスを利用することで、飼い主は「尿の量が多い」「(トイレの)滞在時間が長い」といった異変を察知できる。同サービスを共同開発した鳥取大学農学部共同獣医学科の岡本芳晴教授は「飼い主がいち早く異変を感じ、猫を動物病院につれてくれば早期治療につながる」と解説する。
岡本教授によれば、ここ30年で猫の平均寿命が増え続けた結果、これまでは発症することの少なかった泌尿器系の疾患が増えているという。異常を早期に発見して適切な治療をすれば「あと5年は平均寿命を延ばせる」(岡本教授)と見込んでいる。
犬の緊張状態を数値で把握
次に犬向け健康管理ビジネスの概要を解説しよう。
「犬向けバイタル計測サービス」という事業で、7月1日から犬の自律神経バランスを数値化する技術を企業や研究機関に提供する。具体的には、犬にハーネス型ウェアラブルセンサーを着用させ、体温や心拍数などを計測し、犬が緊張しているのか、それともリラックスしているのかを分析する。ペット関連商品やサービスを開発する企業に向けてデータの計測・解析サービスを、研究機関には計測システムのレンタルサービスをそれぞれ提供する。
サービス費用は、ペット関連企業向けには受託内容に応じて決める方式をとり、研究機関向けには8頭分で月40万円から提供する。
このシステムをシャープと共同開発した大阪府立大学獣医臨床科学分野・獣医臨床センターの島村俊介准教授は「日常の環境で健康状態を把握すれば、飼い主が動物の異変に早く気付くことができる。将来は予防医療に発展させたい」と語った。猫のサービスと同様、ペットの健康状態を気遣う飼い主向けには一定数の需要があると考えている。
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