マミートラックとは無縁、ファンケルの管理職ワーママの仕事術:女性が活躍する職場(4/4 ページ)
創業以来、女性の力を生かすことに努めてきたファンケルは、現在も社員の8割が女性である。では、同社の女性管理職はどのような働き方をしているのだろうか。子育てをしながら部長として38人のメンバーを率いる山本真帆さんに話を聞いた。
部下がキャリアを諦めそうな徴候を察知し、声を掛ける
子育てと仕事の両立を支援する制度は充実してきているが、それでも女性は迷いに直面することが多い、と山本さん。
「うちの部は30〜40代の社員が多く、ちょうど育児期に入っている人がたくさんいます。40代になると、介護に直面する人も増えてきます。女性は特に、そういうライフステージの変化の影響を受けやすいんですよね。そうなると働き方を変える必要が出てきて、仕事に対するスタンスも変わりやすい。そこでキャリアを諦めようとするメンバーも出てくるので、『怪しいな』と感じたら、面談するようにしています」(山本さん)
面談は定期的に行っているわけではなく、直属の課長からの情報を得たり、山本さんが直に接する中でモチベーションや仕事への姿勢に変化を感じたりする時に、声を掛けるのだという。
話を聞いてみると、抱えている課題は人それぞれ。その内容によって、利用できる人事制度をアドバイスしたり、人事部と相談して対応したりする。
「育児に関しては会社の制度もだいぶ整っているし、皆が利用しているから分かりやすいですが、それ以外の問題に直面すると、どうしたら良いかわからなくなってしまうんですね。でも、いろいろな制度を応用してできることもあるので、相談してもらえれば、解決の糸口が見つかることも多いんです」(山本さん)
メンバーが働き続けられるよう、きめ細かくサポートすることが、マネジャーとしての大事な仕事だと山本さんは考えている。昨今は、組織を支配して自分の思い通りに動かすというよりは、個々のメンバーを尊重し、それぞれの活躍を支える「サーバントリーダー」と呼ばれるようなリーダーシップが求められている。山本さんのスタイルは正にサーバントリーダーだ。
山本さんは入社以来、さまざまな事情を抱えながらもいきいきと仕事をしている女性の先輩たちの姿を見てきたことや、逆に同期がやむなく辞めてしまい、「もったいない。上司の声掛けで何か変わったのではないか……」と感じたことなどが、今の自分自身の働き方につながっているという。創業してからずっと女性が力を発揮してきた会社だからこそ、「男性的なリーダー像」にとらわれることなく、女性がいきいきと働き、活躍できる組織作りが可能なのかもしれない。
著者プロフィール
やつづかえり(ERI YATSUZUKA)
ライター、編集者
コクヨ、ベネッセコーポレーションに勤務後、2010年にフリーランスに。13年に組織人の新しい働き方、暮らし方を紹介するWebメディア『My Desk and Team』開始。女性の働き方提案メディア『くらしと仕事』の初代編集長(〜18年3月)を務め、現在はYahoo!ニュース(個人)などで働き方、組織などをテーマに執筆中。
関連記事
- ファンケルの「アクティブシニア社員」は会社に何をもたらすのか?
労働人口が減少する日本において、いち早くシニア世代が活躍する場所を作ろうとする企業が出てきている。化粧品と健康食品メーカーのファンケルでは65歳以上の社員が柔軟な勤務体系で働き続けられる「アクティブシニア社員」という制度を打ち出した。そこで活躍する社員に実際の話を聞いた。 - 就活をやめてエストニアへ そこで私が確信した日本と世界のキャリア観の決定的な違い
普通なら就職活動真っ只中の期間である大学3年生の1月から大学4年生の6月までの約半年、就活を中断してエストニアに留学中の筑波大学4年生、齋藤侑里子さん。そんな彼女が現地で感じた、日本の就活への違和感、グローバルスタンダードなキャリアの築き方とは――。 - 松屋フーズ、ヤマト、KDDI、第一生命 先進企業に探る「障がい者雇用」の本質
2018年4月から障がい者の法定雇用率が引き上げられた。ヤマト運輸や松屋フーズなど「先進的」と呼ばれる企業は、障がい者の能力をいかに引き出しているのか。障がい者雇用の本質を探る。 - 福岡から出てきた私が入社3カ月で店舗運営を任された話
ゲイトという会社で働いている尾方です。この会社に入社してすぐ、ある居酒屋店舗の運営を任されることに。そこでのエピソードを基に、仕事における「目標」の大切さをお話ししたいと思います。 - 女子アナから働き方を変えた前田有紀さんがいま伝えたいこと
テレビ朝日のアナウンサーとして活躍した前田有紀さんは、入社10年という区切りの年に退社。そこからフラワーやガーデニングの世界に飛び込んだ。彼女自身の歩みを振り返りながら、いま、そしてこれからをじっくりと語ってくれた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.