「女性就業率80%」政府目標、保育の受け皿が足りない NRI試算:追加整備で経済効果
野村総合研究所(NRI)は6月26日、政府が定める女性の就業率目標80%を達成するには、政府が整備を予定している32万人分の保育の受け皿に加えて、27.9万人分の追加整備が必要だとの調査結果を発表した。
野村総合研究所(NRI)は6月26日、政府が定める女性の就業率目標80%を達成するには、政府が整備を予定している32万人分の保育の受け皿に加えて、27.9万人分の追加整備が必要だとの調査結果を発表した。
政府は2023年までの達成を目標に掲げており、これに向け20年までに32万人分の保育の受け皿を準備すると発表している。だが、NRIの試算ではこれだけでは十分でないという。
NRIの武田佳奈 未来価値研究室上級コンサルタントは「保育の受け皿を充足させることは労働力の確保だけではなく、出生率の上昇にもつながる」と、子育て環境を整備する重要性を訴える。
保育施設や子育て環境の改善に向けた自治体や企業の取り組みが進む一方、NRIが母親を対象に実施したアンケート調査の結果からは、保育施設を利用したくても利用できない人がまだ多い実態が浮き彫りとなった。
また、保育施設不足は人口が集中する都市部の問題と思われがちだが、地方圏にも保育施設を利用できない人が一定数いることも分かった。
武田氏は、保育施設を利用できなかった家庭の48.4%で母親が育休を取得・延長している実態も指摘しつつ、保育施設不足のため女性の就労機会が奪われているとし、企業の人材確保の観点からも保育需要への対応には極めて重要な意義があると語った。
NRIの試算によると、保育施設の追加整備にかかる4000億円に加え、年間2900億円程度の運営費がかかる。だが年間1.9兆円の所得増大効果が期待でき、消費拡大などを踏まえると全体の経済効果は年間3.8兆円に上るとして、コストを上回る確実なリターンが期待できるという。
人材確保が死活問題になりつつ企業に対しても、踏み込んだ対応を求めた。人材問題を競争力確保のための経営戦略として認識している企業も出てきており、こうした企業は就業環境の整備を最重要施策の1つとして捉えているという。
保育に関する調査は2018年4月16〜18日に、インターネット上で実施。全国の未就学児童を持つ女性3688人と、今年4月に新たに保育施設を利用したかったが利用できなかった女性400人が対象となった。
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