ビジネスマン僧侶が挑む お寺が「コンシェルジュ」になろうとする理由:築地本願寺が立ち向かう“寺離れ”(5/5 ページ)
築地本願寺は「開かれたお寺」を目指すプロジェクトを立ち上げた。仕掛け人は、ビジネスマンとしての顔も持つ、代表役員 宗務長の安永雄玄さん。“寺離れ”が進む現状に立ち向かうためにはどうすればいいのか。取り組みとその背景を探った。
人生の“コンシェルジュ”を目指す
気軽に境内に入りやすい雰囲気づくりに貢献しているのが、新しく造った施設。それが、「寺と」プロジェクトの象徴とも言える「インフォメーションセンター」と「合同墓」だ。
インフォメーションセンターは、さまざまな人たちとの“接点”をつくる場所。「参拝帰りなどに、気軽に立ち寄ってもらう」ための機能が集まっている。
その1つが、プロントコーポレーションが運営するカフェ「Tsumugi」だ。看板メニューの「18品の朝ごはん」は、“インスタ映え”するメニューとして人気を集めている。お粥とみそ汁、16種類のおかずをセットにした朝食メニューだ。「18品」というのは、聖典「仏説無量寿経」に説かれる阿弥陀如来の48願のうち最も重要な願が「第18願」であることに由来している。仏教にちなんだメニューだ。
その他、築地本願寺のオリジナルグッズや仏教用品など約300アイテムを販売するオフィシャルショップ、仏教関連の書籍を幅広くそろえたブックセンターを設けている。
一方、合同墓は、現代の切実な「墓事情」を考慮した施設だ。地元にお墓があっても、管理しきれない。ましてや、子どもや孫の代になったらどうなってしまうのか。そんな不安を抱える人は多い。合同墓であれば、いつでもお参りできる。毎日お経をあげて管理してもらえる。そんなニーズがますます増えていくと考えた。17年に受け付けを始めたところ、すでに2500人以上の申し込みがあるという。
“個人の時代”に対応して、「築地本願寺倶楽部」という会員制度も始めた。年会費無料で、相続の相談や遺品整理のサポートなど、さまざまな人生サポートサービスを提供する。電話で相談できるコンタクトセンターも設けている。
安永さんが目指すのは、人生の“コンシェルジュ”。「寺と」プロジェクトはまだ始まったばかりだ。「たくさんの人と縁を深めるため、サービスをより充実させていきます」
「企業は利益、宗教法人は伝道布教と、目的は違いますが、両方とも『コーポレーション』です。寺も存続し続けるために、企業と同じ考え方を持って取り組まなければいけません。その時代に必要なことをやっていく。それしか道を切り開く方法はないのです」
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