ビジネスマン僧侶が挑む お寺が「コンシェルジュ」になろうとする理由:築地本願寺が立ち向かう“寺離れ”(4/5 ページ)
築地本願寺は「開かれたお寺」を目指すプロジェクトを立ち上げた。仕掛け人は、ビジネスマンとしての顔も持つ、代表役員 宗務長の安永雄玄さん。“寺離れ”が進む現状に立ち向かうためにはどうすればいいのか。取り組みとその背景を探った。
銀座に「サテライトテンプル」
2016年5月、東京・銀座のビル内に、サテライトテンプル「築地本願寺GINZAサロン」を開設した。1日1〜2回の講座を開講する「KOKOROアカデミー」と、僧侶に悩みなどを相談できる週2日の「よろず僧談」を実施している。
講座の内容は仏教に関するものだけでなく、終活、ストレスマネジメント、リンパマッサージ、ヨガ体験など幅広い。講師陣も、さまざまな分野の専門家をそろえた。「宗教」に対するハードルを下げるために、「仏教絡みの講座は3分の1以下にしている」という。会社帰りに立ち寄れるように、平日夜の講座を充実させている。
「普段は寺に来ない人たち、特に働く40〜50代の方が主なターゲットです。心のコリをほぐしてもらえるようなコンテンツを目指しています」
築地本願寺GINZAサロンは、2年で約5000人の登録会員を獲得。これまで寺に縁がなかった人たちとつながりをつくることに成功した。安永さんは「これからも2カ所目、3カ所目とサテライトテンプルを造っていきたい」と意気込む。
もちろん、外に出ていくだけでなく、寺の境内も重要だ。大きく変える必要があると安永さんは考えていた。1934年に建造された本堂は、インドの古代仏教建築を模した外観が特徴的だが、その目の前には駐車場が広がっていた。広い敷地を有効活用していたとも言えるが、景観は美しくない。そこで、駐車スペースの見直しを含めた境内整備に着手した。
17年秋のリニューアルを経て、いま本堂の前に広がっているのは、きれいに手入れされた芝生。築地という土地柄もあってか、外国人観光客が気軽に足を踏み入れて、壮大な本堂をバックに記念撮影をする姿も多く見られる。入りづらい、というイメージは一掃され、明るい雰囲気だ。
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