ビジネスマン僧侶が挑む お寺が「コンシェルジュ」になろうとする理由:築地本願寺が立ち向かう“寺離れ”(3/5 ページ)
築地本願寺は「開かれたお寺」を目指すプロジェクトを立ち上げた。仕掛け人は、ビジネスマンとしての顔も持つ、代表役員 宗務長の安永雄玄さん。“寺離れ”が進む現状に立ち向かうためにはどうすればいいのか。取り組みとその背景を探った。
「本当にお寺に必要なのか?」と問われた
たくさんの人と新しい“絆”を築いていくためのアイデアは次々と浮かんだ。しかし、それを形にするのは決して簡単ではなかったという。「大変でした。取りあえず実績を出さなければ、次に取り掛かれない。そんなもどかしさもありました」と振り返る。
大きな壁になったのが、初めての取り組みに対する理解がなかなか得られないことだ。「企業が手掛ける事業であればすんなりできることでも、寺では何もかも初めて。考え方やノウハウが組織にビルトインされていないのです」
プロジェクトを進める中でよく投げかけられたのが「それは、本当にお寺に必要なのか?」という問い。お金をかけて新しいことをして、それが伝道布教につながるのか。心配するのは当然かもしれない。
しかし、安永さんはこう言い切る。「誰もが環境の変化を感じていますが、それを正面から見つめたくないだけなんです。現状を認識するのは確かにつらい。ですが、見つめざるを得ない。新しいことにはリスクもありますが、何もしないとただ衰退していくのを待つことになるのです」
寺の力は確実に弱くなっている。80年前のように、境内が人で埋め尽くされることはもうないかもしれない。「あのころのイメージを持ち続けていると、衰退していきます」。それならば、いま求められていることをやるしかない。安永さんの主張はシンプルだ。
「現代のライフスタイルに何が求められているか」を徹底的に考えた安永さんが最初に起こした行動は、「寺から出ていくこと」。築地本願寺の名前は知っているが、入ったことはない。なんとなくハードルが高い。怖い。そう感じている人が多いことから、イベントなどで寺に呼び込むことは難しくなっている。「それならばこちらから外にいる人々のところへ出ていこう」。そう考えたのだ。
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