ハイテクが士業から仕事を奪う!? 社労士の生き残る道とは:HR Techは人事にとって魔法か、それとも脅威か(1/3 ページ)
社会保険労務士の業界では労務管理などを楽にするHR Techの脅威がささやかれている。こうしたサービスを活用し急成長する社労士もいるが、むしろ彼らもアナログな業務の重要性を強調する。
〜HR Techは人事の現場で本当に「使える」のか〜:
ここ数年、人材の採用や管理、評価、育成などにITを活用したHR Techが増えている。人事が手で入力したり、膨大なデータを直に見て判断したような作業をプログラムが代行。AI(人工知能)が人材の「評価」まで行うサービスも登場している。
ただ、人事とはもともと「人対人」のアナログな仕事だったはず。デジタルを駆使するHR Techが果たしてどこまで役に立つのか。あるいは使えすぎて人間の仕事を奪わないか。最前線を追った。
法律で業務を独占できたり専門性が高いことから「食いはぐれない」というイメージもある職業、士業。しかしAIを始めとしたテクノロジーはそんな“聖域”の仕事にも進出し始めている。
例えばクラウドシステムなどを使ったHR Techのサービスは、企業の人事や労務の管理、手続きにかかる手間を省いている。企業側が便利になる半面、その業務を請け負ってきた社会保険労務士の業界では「われわれの仕事が将来なくなるのでは」とささやかれているという。テクノロジーに代替されるのか、それとも使いこなすのか。社労士たちの挑戦を追った。
クラウドシステムを武器にITに特化
東京・渋谷に事務所を構える山本純次さんはIT分野に特化した社労士。企業の人事などを経て2016年に社労士として独立した。現在取引している約70社のほとんどはIT系。2年目の売り上げは1年目の3倍にまで伸びた。
急成長の秘密はHR Tech。労務手続きや人事情報の管理をクラウドサービスで行い事務作業の手間を省く「SmartHR」というソフトを使っている。
開業後、「独立したての社労士は既存のやりかたでは顧客を獲得できない」と悩んでいた山本さん。このサービスを知り、すぐ運営会社のSmartHR(東京都千代田区)に問い合わせて使い始めた。
山本さんによると中小のIT企業は労務管理の手間を省くため、こうしたクラウドシステムを好んで導入していることが多い。一方でクラウドシステムに長けた社労士はまだ少ないことから、SmartHRを使いこなせる点を売りにIT企業との契約を増やしていった。
「労務管理でクラウドシステムを使うメリットは大きい」(山本さん)。例えば企業が社労士に入社手続きに関する業務を依頼する場合、まず入社予定者から年金手帳のコピーなどいろいろな書類や情報をもらう。それらを受け取った社労士が申請書類にまとめ、役所などに提出する必要があった。
SmartHRを導入した企業では入社手続きに必要な情報を入社予定者自身が入力。それらがクラウドシステムに集積されるため、企業と社労士双方が共有・管理できようになる。互いに書類を郵送したりメールして情報をやりとりする手間が省ける。役所への書類提出もボタン1つで電子申請が可能だ。
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