新型フォレスターのふくよかなリズム:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)
スバルは新型フォレスターを7月19日に発売する。フォレスターはスバルブランドの最量販車種となるSUVであり、それに新世代シャシーであるSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)が導入されたことが今回の最大のポイントだ。では、実際に乗ってみてどうだったかというと……。
新世代プラットホームの真価
とはいえ、クルマは乗ってなんぼだ。伊達だろうが真面目だろうが、乗ってダメなら話にならない。新型フォレスターの走りはどう構築されているのだろうか?
まず第一に、前述した通り新世代プラットフォーム、SGPが採用されたことだ。どのメーカーの新世代シャシーにも共通するのが、コンピュータ解析技術と素材性能のレベルアップでボディ剛性が恐ろしく向上している点だ。それはSGPも同じだ。そしてこの向上したボディ剛性のリソースをどこにどう振り向けるのかというさじ加減に主査の手腕が問われる。
アシをガチガチに固めて、ハイグリップタイヤを履かせて「ニュル最速」みたいなことを狙おうと思えば狙えるだろうし、さまざまな余裕として安心感の演出にも使える。フォレスターのアプローチは面白い。そのリソースを「ふくよかさ」に振り向けた。
実はふくよかさとは新型フォレスターのプレゼンの中で、インテリアデザインのテーマとして語られた言葉だ。その時は、クルマのデザインの話の中で珍しい言葉を使うものだなと思っていた。しかし、今回試乗が行われたサイクルスポーツセンターのクローズドコースでシートに座った瞬間「あっ! ふくよかさはクルマ1台全体を串刺すテーマなのかもしれない」と思った。
まずシートが大ぶりで、座面の接触面積が増えている。そして体への当たり方がもっちりと柔らかく、シートがふくよかだ。ステアリングを握るとその握り心地が柔らかい。走り始めると、パワートレインのトルクの出し方も、少なくとも2.5の自然吸気ユニットに関してはふくよかなフィールがある。
「ふくよか」と「だらしない」は違う。ただふわふわと反力が軽いだけならだらしないになるが、柔らかさの奥にちゃんとどっしりとした信頼感があるからふくよかと言える。ささいなことだが、シートベルトのアンカーの形状が変わって大きく重くなった。あくまでもイメージだが、いかにも守ってくれそうな安心感を受ける。
それはブレーキも同じだ。変な言い方だがブレーキフィールが「太い」。場所がクローズドのコースなので公道ではやらないような強い減速をかけるが、そこで感じられる安心感が高いのだ。踏力に応じたリニアリティがあり、制動力が十分で、かつ緩めた時の制動力変化もリニアだ。サーキットのような場所で振り回されるのが本領というクルマではないはずだが、全然音を上げない。
ハンドリングも良好だ。何よりも、旧型比でステアリング軸の支持剛性と、回転の精度感が上がった。その上でシャシーのねじり剛性が上がっている。その影響が顕著に出るのはスラロームで、旧型は剛性不足のねじれで遅れる分、揺り返しのリズムがつかみ難く、探りながらブレーキとハンドルのタイミングを見ていかなくてはならない。
1つ目のパイロンは良いが、操舵を2度3度と繰り返すうちに残留したロールが次の操作とシンクロしてしまうタイミングがある。フェイントモーションが強く掛かるといっても良いだろう。しかもこのスラロームは下り勾配に設けられていたので、柔道の技をかけられた時のように、リヤタイヤの抜重が限度を超えて滑り始め、一気にオーバーステアに移行する。フロント外輪に荷重が移り過ぎてしまうのだ。
ところが、新型は1回目の操舵でこの荷重移動のタイミングと量がつかめる。スラロームというのは、公道における緊急回避のシミュレーションだから、とっさにダブルレーンチェンジのような回避行動でそういうシンクロ周波数にたまたま入ってしまうかどうかが分かる。もちろんばねやダンパーを締め上げて絶対的なロールを抑えてしまえば防止できるが、当然乗り心地とバーターになる。そこでしなやかにアシを動かしながらも体勢を崩しにくい仕立てにできたのは大きい。緊急回避時の安全性が高まったのはSGPの最も大きな貢献ポイントだろう。
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