世界が知らない“最強トヨタ”の秘密 友山副社長に聞く生産性改革:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)
トヨタがレース活動を通じて働き方改革を推進する理由。トヨタGRカンパニーのプレジデントである友山茂樹副社長へのインタビュー取材によって、なぜそんな大胆な改革が可能なのかを究明した。
問題がないと不安になる
友山: やっぱりTPSという原型があったからでしょうね。トヨタの中でTPSをよく知らない人や、やったことのない人はいるけれど、「TPSなんてダメだ」って人はいないんです。共通の価値観です。TPSのいうジャストインタイム。「必要な時に必要なものを必要な数だけ届ける」。これは生産部門だけでなく事務部門でも同じです。後工程の最終地点はお客さまです。お客さまの必要な時に必要なものを必要な数だけ届けるというのが戻るべき原則です。
自働化はどんな仕事でも工程があって、品質は工程で作り込む。そのためには、異常はとにかく顕在化させる。異常があったら仕事は止めていい。事務の仕事だって大きなトラブルがあったらそのまま進めないで止めちゃっていい。止めたら「何でそれが起きたか」を「なぜ」を5回繰り返して解決してから再開しましょう。そのためにラインオフが遅れたっていいんですよ。誰も仕事を止めたり、異常を顕在化することに罪の意識がないんです。
トヨタの役員会議とかでうまくいった話をしても誰も興味がないんです。寝ちゃう(笑)。「ここに異常がある」とか「これが問題だった」と言うとワーッと盛り上がるんです。トヨタの人は問題が大好きなんですよ。むしろ問題がないと不安になってきます。「そんなうまくいくわけないだろ!」って怒られるんで、皆、一生懸命問題を探すんです。
問題を見つけて解決することが美徳だという意識があるんですよね。「かくすればかくなるものとわかりなば、やむにやまれぬカイゼン魂」って(TPSをまとめ上げた)大野耐一さんの言葉があるんですけど、「カイゼンできる」と分かってしまったら、もういても立ってもいられない。そういうことなんですよね。
池田: なるほど、だからレースプロジェクトから「今まで気付かなかった問題点が見つかった」という人が帰って来ると、皆で群がってどうやるのか興味津々になるわけですね。システムだとかそういうレベルじゃなく、人が人に影響を与えて、あっという間に最速開発プロジェクトマネジメントがスタンダードになっていくと。トヨタが強い理由が少し分かった気がします。本日はありがとうございました。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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