世界が知らない“最強トヨタ”の秘密 友山副社長に聞く生産性改革:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)
トヨタがレース活動を通じて働き方改革を推進する理由。トヨタGRカンパニーのプレジデントである友山茂樹副社長へのインタビュー取材によって、なぜそんな大胆な改革が可能なのかを究明した。
事務職も流通もTPSで変える
友山: 当社は4月にTPS(トヨタ生産方式)本部を作りました。その心は、TPSを製造分野だけじゃなくて、事務系や流通分野にも展開しようと。いわゆるクルマの開発から生産、物流、販売、サービスまで一貫してビジネスの戦闘能力を上げていこうと。
そうすると、よく「TPSが何で事務屋さんに使えるんだ」と聞かれるんです。でも事務の仕事もいくつかの工程なんです。で、その工程にたまっている書類や情報もできる限りリードタイムを短くしてこうと。まさしくジャストインタイムなんです。かつ、工程ごとにきちんと後工程に送っていい品質基準を決めて作り込んでいく。そうして手戻りをなくそうというのはまさに自働化なんです。われわれはそういうことを事務部門にも他の部門にもきちんと入れていこうとしているんです。そのためにホワイトカラーの7つの無駄というものを作りました。
- 会議の無駄
- 資料の無駄
- 根回しの無駄
- 調整の無駄
- 上司のプライドの無駄
- まんねりの無駄
- 「ごっこ」の無駄
例えば、僕のところに根回しのために何度も見た資料が来たりするんですよ。でも何度出して来てもダメなものはダメ。無駄なんですよ。あるいは会議で自分の上司の顔に泥を塗らないために、何を聞かれても困らないように分厚い想定問答とかを作るんですけど、そんなものはほとんど使わないんです。無駄です。
今までこうやって来たからというマンネリの無駄とか、やっているフリをする、あるいはやっているつもりになる「ごっこ」の無駄とか、そういうのを全部なくさないとダメなんです。今は資料書くと怒られますからね。資料を書いて仕事が終わった気になるんですけど、まさに「ごっこ」の無駄です。今は役員会議なんて資料なしで、全員が自分の頭の中だけで話しますよ。
池田: 根回しとか資料とかって、組織の中で独断専行と言われないための防衛策としてやっているんじゃないかという気がするんですけど?
友山: 根回ししたって、資料書いたって、うまくいかないものはうまくいかないんですよ。そういう手間をかけて、会議やって「はい、ダメでした」。で、また根回しと資料作りからやり直し。レースと一緒ですよ。最速で回していくためにはそんな無駄なことやってたら間に合わないんです。
池田: とことん議論を戦わせられる会議の体制があるからそれで回るんですか?
友山: 議論もね。社長がバッターボックスに立つことが大事だって言ってますから。「やる」「やらない」で、やらないって選択肢は最初からないんですよ。やり方をどうするかが議論の対象で、やらない理由なんて言ったら怒られますからね。できない理由づけの議論はしないんです。
池田: なるほど。腑に落ちました。先ほどの7つの無駄って、全部内向きの仕事なんですね。やっていく、つまり外に向かった仕事じゃないということですね。普通の会社はなかなかそんなことはできないですよね。
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