“透明ビール”を飲んでみた 8年越しの開発、アサヒ「クリアクラフト」:7月下旬に再販売(1/2 ページ)
アサヒビールがテスト販売を開始した透明な発泡酒「クリアクラフト」。7月下旬から2回目のテスト販売を実施する。技術的なハードルを越え、8年越しで開発された「透明ビール」を飲んでみた。
アサヒビールがテスト販売を開始した“透明”な発泡酒「クリアクラフト」。6月25日から、東京と大阪の4店舗で約3000杯を販売したところ、7月初めには全て売り切れた。7月下旬から2回目のテスト販売を実施する。1回目よりも味を改良して、消費者の反応を探る。
今、「透明な飲料」がトレンドになり、多種多様な透明飲料が発売されているが、クリアクラフトの開発が始まったのは8年前だったという。「究極にすっきりとした、おいしいビール系飲料をつくりたい」(開発プロジェクト部の西山雅子氏)という思いから、技術的ハードルを乗り越えてテスト販売に至った。
成功のポイントは「アミノ酸」
ビールを透明にする、という発想はどこから来たのか。西山氏は「ビールはちょっと重くて、飲むと満腹感がある。ビールで乾杯後、他のお酒に移ることも多い。飲み続けることができる、『究極にすっきり』としたビール系飲料ができないかと考えた」と説明する。
「味が同じでも、色が濃いと“コクがある”と感じる」(西山氏)。“すっきり感”には、視覚による情報も大きな影響を与えることから、「無色透明にしようと思った」という。
ところが、技術的なハードルは高かった。100回以上試作したものの、成功しなかった。透明にすることはできても、どうしても不快な香りが残ってしまう。提供できるレベルとは言えず、お蔵入りに。その後もアイデアは何度も持ち上がったが、やはり香りがネックとなり、商品化には至らなかった。
そのアイデアが再び掘り起こされたのが、17年11月。西山氏の後を引き継いだ開発者らが、香りの問題に取り組んだ。
その問題を解決したポイントは、アミノ酸だった。ビール造りでは酵母の発酵が欠かせないが、そのためには、アミノ酸などの栄養を入れて酵母を増殖させる必要がある。そのときに使われずに残ったアミノ酸がビール独特の味わいを生み、重く感じる原因にもなる。アミノ酸を残さないようにすれば、すっきりとした味になる、というのが当初からの発想だった。しかし、アミノ酸の量をうまく調整することは難しく、酵母が増殖するときにアミノ酸が足りないと、不快な香りが出てくる。「これがどうしても消せなかった」と、酒類開発研究所の大橋巧弥氏は話す。
そこで発想を変えた。「アミノ酸を減らすのではなく、極力なくすことにした」(大橋氏)。栄養がなければ酵母は増殖しない。増殖させずに発酵させてみたのだ。そうすると、不快な香りを出さずにアルコール発酵させることができたという。
そして、不快な香りを出さないための改良が、結果的に「無色透明にするという工程を不要にした」(大橋氏)。本来、色が付いているものを無色透明にするためには「脱色」の工程が必要となる。ビールの場合、アミノ酸と糖が加熱によって「メイラード反応」を起こすことで色が付くが、アミノ酸をなくすことで、その反応が起きなくなる。その結果、脱色しなくても無色透明な麦汁を作ることができるようになった。
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