女性キャリアを停滞させる原因にメス ブラザー工業が講じた施策とは?:諦めずに働き続けるには?(2/3 ページ)
他社に先駆けて女性活躍推進やダイバーシティに取り組んできたブラザー工業。しかし、現場の女性社員に聞くと「当社は働きやすいが、昇進には二の足を踏んでしまう」という声が少なくなかったという……。
女性のキャリアを停滞させていた原因
18年3月末現在、ブラザー工業の従業員数は3937人で、平均年齢が41.8歳。男女比は8:2である。この比率はここ数年で大きくは変わっていない。同社の人材に対する基本的な考え方として、多様な従業員にワークライフバランスを実現してほしいと考えている。現状の平均勤続年数は14.8年だ。しかし長く働く上で、とりわけ女性社員のキャリアに関して課題があった。
14年度に女性活躍推進のためのワーキンググループ「Teamあじさい」を立ち上げたが、そこでの議論で浮かび上がったのは「ブラザー工業は働きやすいが、昇進には二の足を踏んでしまう」というものだった。
自己の過小評価など女性社員によくある遠慮が原因ではと見ていたが、実際には女性のキャリアを停滞させるような職場環境だったことも否めなかった。例えば、産休・育休によるブランク、その後の短時間勤務による影響や、開発部門に女性社員が少ないなど身近にロールモデルがいないことで、仕事と生活の両立や将来のキャリアパスのイメージがつかない、男性管理職のように夜遅くまで働くことができない、長時間労働までして管理職になることに魅力を感じないといったことが挙げられる。現に女性の管理職は全社員の約1%にとどまっている。
「長時間かつ夜型労働からの脱却など、女性のキャリアを停滞させない柔軟な働き方を実現すべきだと痛感しました」と青木氏は振り返る。
それ以前から女性社員を支援するいつかの制度は導入していた。短時間勤務制度は子どもが小学3年生の年度末まで利用可能で、1時間または2時間短縮の2種類のフレックスタイムを用意した。育児休職制度は、最長1歳半あるいは1歳を超えた3月末までで、もしも保育所に入所できなかった場合は2歳半、または2歳を超えた3月末まで適用できる。
これらに加えて、新たに導入したのが在宅勤務(リモートワーク)制度だ。リモートワークに関しては、育児に加えて、介護しながら働く社員が増加しつつあったことも導入背景にある。
「介護によって休みがちになることでキャリアを諦めてしまったり、退職してしまったりする社員もいます。一時的な介護休職であっても代替要員の確保などで組織運営に影響が出てしまうし、介護休職は社員本人にとって経済的にも精神的にも負担は大きいです。介護休職は最終手段で、できる限り業務との両立を目指せるような、柔軟な働き方が不可欠だと考えました」
約1年間のトライアルを経て、15年10月からリモートワークを実施。活用条件は、以下のいずれかに該当する勤続3年以上の正社員となっている。
(1)小学4年生始期まで子を養育する者
(2)「介護休職制度規程」第3条に定める被介護者を有する者
(3)「母性健康管理に関する規程」の対象者で会社が認めた者
(4)その他、会社が認めた者
リモートワークは週に最大2日で、原則的に曜日を固定するほか、例えば、午前中はオフィスで、午後は在宅で働くような混在スタイルも認めている。現在は58人程度の社員が利用するという。
全社員へのリモートワーク適用はしないのか。青木氏は、開発部門など業務内容によってはオフィスでしか仕事ができない社員もいるため不公平感が生まれることや、東京をはじめとする首都圏と異なり、通勤にそれほどストレスがないことなどから、現状ではあくまで育児・介護社員のための制度としている。
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