インドでボンカレー、華麗にデビュー!? 大塚食品の挑戦:食文化の壁に秘策で挑む(3/3 ページ)
大塚食品がボンカレーのインド市場開拓に乗り出した。インド人は食の好みが保守的で通常のレトルトは売れないと判断、社員食堂にカレーパンの形で売り込む。
現地の文化を否定しない
実際にバンガロールにある企業の社員食堂で、約1500人にボンカレーを無料で試食してもらった。味の評判は悪くない。しかし、彼らはすぐには手を付けなかったという。「バンガロールの人は比較的新しもの好き。それでも肉が入っているか、どんな原料で作ったかを聞いてくる」(植松さん)。実際にボンカレーをお金を出してまで食べるとは思えなかった。
そこでカレーの食べさせ方を変えた。野菜をたくさん入れて煮込んだり、揚げた野菜をトッピングしたり、うどんにルーをかけてみたり…。その中で可能性を感じたのは「カレーパン」だったという。
まず、揚げたパンを切ってルーに付けて出したところ好評を得た。もともと、インドの社員食堂ではサモサ(具材を小麦粉で作った皮で包んで揚げた料理)などの軽食を置く売り場がある。ボンカレーを、サモサに少し似ているカレーパンに仕立てて売ることにした。
植松さんによると、インド人は日本人に比べて同じ料理を週に何度も食べる頻度が高いという。「日本人はカレーパンを好むがそう頻繁には食べない。しかしインド人はスパイスを使った料理が大好きで、毎食『カレー』を食べるのが普通」。このカレーパンを種類がさほど多くない食堂の軽食として置ければ、高頻度で食べてもらえると考えた。
5月にはバンガロールに現地子会社を設立。植松さんが現地で指揮を執り、18年内の発売を目指す。「最終的には(パンだけでなく)インド人の主食の中にボンカレーが入れればいい」(植松さん)。
日本と比べてかなり保守的に見えるインド人の食生活。植松さんは「日本のカレーを無理やりインドに売り込み現地の文化を否定することは、決してしない。現地の人が食べたいと思う、ローカルの料理より少しだけ変わった新しい料理ならば、きっと受け入れられるはず」と話す。
ただ、カレーパン用のボンカレーはインドで生産するものの味はローカライズせず、日本のオリジナルに近づける。スパイスも現地調達するが、インドの物は香りが強く日本のレシピ通りでは味を再現できないという。食文化や風土の壁を乗り越え、ボンカレーはカレーの本場で華麗なデビューを飾れるか。
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