地域活性化を阻害? 東海道本線はなぜ熱海駅で分断されているのか:不便を被る顧客(1/3 ページ)
東海道本線の熱海駅に訪れたことがある人はご存じだろう。下り列車で熱海まで行き、そこからさらに三島方面に乗り継ぐ場合、多くは階段を利用して別ホームに乗り換えなければならない。なぜこのようなことが起きてしまうのだろうか?
小田原駅から東海道本線下り列車に乗って、熱海駅ホームに降り立った。当駅は、東海道本線、伊東線、東海道新幹線の3路線が接続し、温泉街・熱海および伊豆半島の玄関口としての機能を果たしている。
当駅からさらに東海道本線下り列車に乗り継いで、三島駅へ向かう。しかし、筆者が乗車した列車は熱海駅4番線ホームに到着したため、三島方面行き普通列車が出発する3番線ホームへは階段を利用しての乗り換えが必要だった。乗り換え時間もわずかなため、多くの乗客が走って移動していた。
2004年10月15日までは熱海駅をはさんで湯河原方面と函南方面の間を直通する列車が1日53本あったが、翌日のダイヤ改正に伴い20本へと大幅に削減された。東京駅発着普通列車の直通区間も373系特急形車両の1往復を除いて沼津駅までに短縮された。
また同日に、東海道本線二宮方面と御殿場線を結ぶ直通列車も6本から2本へ削減され、12年3月17日には最後まで残っていた両線直通下り列車1本と、東日本旅客鉄道(JR東日本)車両による東海旅客鉄道(JR東海)御殿場線内折り返し運用列車も廃止されたのである。
熱海駅で分断されるのは列車だけではない。熱海駅〜函南駅間のIC乗車券利用も不可となっている。また、御殿場線の国府津駅〜御殿場駅間も現在はIC乗車券が利用できない。19年春に下曽我駅〜御殿場駅間でIC乗車券利用が開始となり、御殿場駅以西との往来が可能となるが、現時点での予定では、国府津駅〜下曽我駅間の利用は引き続き不可で、Suicaエリアにまたがった利用もできないことになっている。
こうした不便な状況は、地域間交流を阻害する方向に働きかねない。一方で、直通列車が多く運行されている沿線では地域間交流が活発であることを示す例もある。
例えば、長野県松本市内の高校や大学には中央西線沿線から通う生徒や学生が少なくないが、これは塩尻駅で境界を接するJR東海中央西線とJR東日本篠ノ井線の間に直通列車が多く設定されており、木曽地方と松本の間のアクセスの利便性が確保されていることも大きな要因と推測される。
児島駅(岡山県倉敷市)を境に西日本旅客鉄道(JR西日本)と四国旅客鉄道(JR四国)に分かれる本四備讃線でも、JR西日本とJR四国の間で「マリンライナー」や特急をはじめとする多くの直通列車が設定されており、瀬戸大橋を往来する通勤・通学利用が多い。このように、直通列車やICカード利用の共通化は地域間交流を促進する可能性があるのだが、実際には分断が解消する目途が立っていないJR会社境界駅は多い。
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