飲まない若者でも職場の飲み会は重視 縮小するアルコール市場、その活路は?:消費者の今を知る(2/3 ページ)
日本のアルコール市場は1996年をピークに縮小傾向に。さらには消費されるアルコールの種類も変容している。90年代半ばまではビールが約7割を占めていたが、今では発泡酒やリキュール、その他の醸造酒等が増えているのだ。この市場の活路は?
アルコール市場の縮小要因
さて、アルコール市場の縮小要因について見ていきたい。日本人はアルコールを飲まなくなっているのだろうか。あるいは世間でよく言われるように「若者のアルコール離れ」の影響なのだろうか。
厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、日本人の飲酒習慣率は、アルコール消費量がピークであった1996年では男性52.5%、女性7.6%であったが、2016年では男性33.0%(▲19.5%pt)、女性(8.6%、+1.0%pt)であり、男性は大幅に低下する一方、女性はわずかに上昇している。
年代別に詳しく見ると、20代の男女では低下しており、確かに「若者のアルコール離れ」は言えそうだ(図2)。しかし、男性では20代だけでなく、全ての年代で低下している。特に30〜40代では20%pt以上の大幅な低下が見られる。20〜40代の男性は飲酒量が多く、飲酒日1日あたり2合以上が45%程度を占める。よって、飲酒量の多い年代の男性が飲まなくなったことが日本のアルコール市場が縮小している大きな要因と言える。
また、少子高齢化の影響もあるだろう。飲酒量の多い現役世代の人口が減り、飲酒量の少ない高齢者が増えている。日本の人口は2010年をピークに減少局面に入ったが、飲酒量が大幅に減る60代以上の人口割合は高まっている。飲酒日1日あたり2合以上飲む割合は男性の50代まで4割を超えるが、60代では3割を下回る。また、総人口に占める60代以上の割合は、1996年では21.3%だが、2016年では34.0%(+6.7%)へと上昇している(厚生労働省「人口動態調査」)。
「アルコール離れ」の背景
なぜ男性は「アルコール離れ」をしているのだろうか。この理由には、健康志向の高まりや会合の機会が減ったことがあげられる。食生活の洋風化などを背景に、日本人男性のBMIは1990年代から上昇傾向にある(厚生労働省「国民健康・栄養調査」)。このような中で2008年から40歳以上では「特定健診・特定保健指導(いわゆるメタボ健診)」が始まった。にわとりが先か卵が先かという印象もあるが、体重増加でアルコール摂取を控えようと考える男性が増えた可能性がある。
また、足元、企業業績は改善しているが、長らく続いた景気低迷の時期を経て、かつてと比べて会合で飲酒をする機会が減った可能性もあるだろう。
若者については、情報通のデジタルネイティブは健康に関する知識が豊富で、むしろ上の年代より健康志向が高いという指摘もある(※1)。また、成熟した消費社会では、飲酒以外にも多様な楽しみがある。
そして、景気低迷の中で生まれ育った世代では、何につけてもできるだけリスクを回避する傾向も強いのかもしれない。
※1 今泉潤子「健康志向が高まる米国で事業強化を進める食品メーカー」、三井住友銀行、マンスリー・レビュー(2015年5月号)
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