飲まない若者でも職場の飲み会は重視 縮小するアルコール市場、その活路は?:消費者の今を知る(3/3 ページ)
日本のアルコール市場は1996年をピークに縮小傾向に。さらには消費されるアルコールの種類も変容している。90年代半ばまではビールが約7割を占めていたが、今では発泡酒やリキュール、その他の醸造酒等が増えているのだ。この市場の活路は?
40代以上の女性で高まる飲酒習慣率
ところで、女性では20〜30代の飲酒習慣率は低下しているものの、40代以上では上昇していた。
男性と比べるとお酒を飲む人数も飲酒量も少ないとはいえ、40代以上の女性では、ひと昔前よりもアルコールを飲むようになっている。また、現在では、20代の男性(10.9%)よりも、40代(15.6%)や50代(12.4%)の女性の方が飲酒習慣率は高いことも興味深い。
40代以上の女性で飲酒習慣率が高まっている背景には、女性の社会進出とともに、女性が好むようなチューハイやカクテルなどの商品が充実してきたこと、また、都市部では仕事帰りに女性が立ち寄りやすい立ち飲みバーなども増えてきたことで、女性がアルコールを楽しみやすい場が充実してきたことが考えられる。
アルコール市場の活路
縮小するアルコール市場の活路は女性にあるのだろうか。確かに40代以上の女性では、かつてよりニーズが高まっており、魅力的なターゲットと言える。しかし、女性でも「若者のアルコール離れ」は共通している。
ここで興味深い調査結果を紹介したい。公益財団法人日本生産性本部「2018年度新入社員春の意識調査」によると、新入社員では、友人からの誘いよりも職場の飲み会を優先する志向が高まっている。
2000年では職場の飲み会を優先する割合は57.5%だったが、2018年では82.3%へと上昇している。
なぜ新入社員は職場の飲み会を優先するようになったのだろうか。バブル崩壊以降、長らく就職氷河期が続いた。最近は売り手市場だが、人気のある企業の内定を得るには相変わらず厳しい競争を勝ち抜く必要がある。よって、新入社員では、せっかく入った会社なのだから周囲と上手くやりたい、という気持ちが高まっているのかもしれない。
とはいえ、今の若者は上司の誘いに長時間付き合うような「昔ながらの飲みニケーション」は求めていないだろう。また、飲み会の場でも若者が飲むのはノンアルコールかもしれない。かつての飲み会の様相とは違うかもしれないが、まずは、飲み会という名のコミュニケーションの場を作ることがアルコール市場の活路につながるのではないだろうか。
著者プロフィール
久我尚子(くが なおこ)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員
研究・専門分野:消費者行動、心理統計、保険・金融マーケティング
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