日本の料理学校で外国人が「和食」より「洋菓子」を学ぶ深い訳:スシやアニメだけがクールジャパンじゃない(1/3 ページ)
料理の名門「辻調」の製菓学校で洋菓子作りを学びに留学する外国人が増えている。日本の高い技術やビジネスモデルの習得が目的だが、法規制のため卒業後日本の洋菓子店で実務経験を積めないのが課題。
すしや天ぷらをはじめ、今や世界中で食べられている日本食。本場の調理技術を学ぼうと日本に留学する外国人も少なくない。ただ、最近は「和」食だけでなくなぜか「洋」菓子作りを学びに訪日する留学生が増えているという。
彼らが特に集まるのが「料理の東大」「世界三大料理学校の一角」と称される専門学校、辻調グループ。2018年4月に入学した外国人留学生約200人にアンケートを取ったところ、42%が洋菓子作りを希望した。日本料理の33.5%を凌ぎトップの人気だ。
しかしいくら世界的な名門とはいえ、なぜ外国人留学生は洋菓子の本場である欧米でなく日本の料理学校を選ぶのか。背景には、よくメディアが連呼する「日本の●●が外国人に人気」といった単純な日本礼賛論では説明のつかない、深い理由があるようだ。
タイ人、日本旅行中に洋菓子のファンに
シスリヤパットクン・サオワロスさんは辻調グループの辻製菓専門学校(大阪市阿倍野区)で学ぶ25歳の女性。タイ・スパンブリー県出身、母国でも日本でも「プリンス」という愛称で呼ばれている。日本各地を旅行するのが趣味で、この夏は花火大会に行くのが楽しみという。
タイの大学では菓子ではなく微生物学を学んでいたプリンスさん。卒業後は実家の事業を手伝っていたが、もともと趣味として楽しんでいた菓子作りをちゃんと学びたいと考えていた。
日本のアニメが好きだったことから日本語の勉強にも興味があり、まず17年に訪日して日本語学校に入学。その際、タイでも有名だった辻製菓専門学校のオープンキャンパスを訪れたのがきっかけで、18年4月に入学することになった。
欧米では世界的な洋菓子ブランドが数多くあるのに対し、世界で通用する日本の洋菓子は決して多いとはいえない。しかしプリンスさんによると、タイでは意外なほど日本の洋菓子が人気という。
「タイ人は日本旅行中によくショートケーキやタルトなどを食べて喜んでいる。洋菓子店がたくさんあるし、コンビニでもおいしいお菓子が買える」(プリンスさん)。タイに比べて特にケーキの生地や生クリームの質が高いと感じるという。
プリンスさんも留学前に日本を数回旅行して洋菓子を堪能していた。友達同士、日本で撮ったスイーツの写真をFacebookなどで共有して「これおいしそう、食べてみたい!」と盛り上がっていたという。
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