ワタミを救った「鶏肉」に外食チェーンが熱視線を送るワケ:牛や豚より何が優れているの?(3/4 ページ)
経営不振に陥っていたワタミが鶏肉をメインにした業態の店舗を増やすことで復活しようとしている。近年、鶏肉をメインにした業態に大手外食チェーンが次々と参入しているが、ビジネスモデルの観点から牛や豚より鶏が優れている理由を考察する。
牛や豚より優れている点とは?
なぜ、鶏肉はここまで注目されているのだろうか。
鶏肉の一番の魅力は安さだ。業務用食材を扱うMマートのWebサイトを見ると、飲食店でよく使われる豚バラスライスの価格は、外国産で1キロ当たり800円前後、国産で1300円前後となっている。同様に、牛丼などによく使われる米国産の牛肉バラスライスは1キロ当たり1000円程度だ。
一方、鶏肉の場合、ブラジル産の鶏モモ肉は1キロ当たり300〜400円となっており、牛や豚に比べて圧倒的に安い。
鶏肉はなぜ安いのだろうか。食肉の流通に詳しい関係者によると、生産コストの違いが影響しているという。一般的に牛が出荷されるまでに必要な飼育期間は30カ月で、豚は10カ月といわれている。一方、鶏は生まれてから50日で出荷できるため、飼料や人件費が豚や牛ほどかからないのだ。
飲食店にとっての焼き鳥の魅力とは?
外食チェーンにおいて、鶏肉を使ったポピュラーな料理は焼き鳥とから揚げだが、ビジネス的な観点で分析すると、どのようなメリットがあるのだろうか。
まずは、焼き鳥の原価を分析してみよう。業務用食材を扱うMマートで国産モモ肉の価格を調べたところ、1キロ当たり700円となっていた。外食チェーンの内情に詳しい関係者によると、業務用に仕入れた鶏肉はほぼロスがなく使えるのが特徴で、皮をひいたとしても、食材として使える部分は90%残るという。実質的なモモ肉1キロ当たりの価格は777円となるので、1グラム当たりの単価は0.77円となる。一般的な焼き鳥1串に使われる鶏肉は30〜40グラムなので、1串当たりの原価は30円弱となる。
国産のモモ肉を使わなくても、1キロ400円のブラジル産を使えば、1串当たりの原価は20円未満円となる。海外の工場で加工された商品を仕入れれば、串うちという面倒な手間は発生しないというメリットもある。
つまり、原価が安いので焼き鳥は1串100円で販売しても十分もうかるのだ。さらに「焼き鳥1串100円」と打ち出せば、お得感が出るので消費者をお店に引き寄せる効果も見込める。
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