1年半でシステム刷新のクックパッド、怒濤の「5並列プロジェクト」に見る“世界で勝つためのシステム設計”:CIOへの道(4/4 ページ)
海外展開を視野に入れ、“世界で勝つためのシステム構築“に取り組むことになったクックパッド。海外企業を参考にプロジェクトを進める中、日本企業のシステムとそれを支える組織との間に大きな差があることを認識した同社は、どう動いたのか。また、分散と分断が進み、Excel職人が手作業で情報を連携している状態から、どのようにして統合された一貫性のあるシステムに移行したのか――。怒濤のプロジェクトの全容が対談で明らかに。
キツいプロジェクトを成功させるために最も重要なのは
白川氏 確かに、企業文化が変革プロジェクトに与える影響は大きいですね。お客さんの文化によって、かなりプロジェクトの戦術も期間も変えますし。プロジェクトはコアメンバーのカルチャーが良い方向に向かないと絶対に成功しないので、私たちもそこを染めるところにはかなり気をつかいますね。
中野氏 このERPプロジェクトのプレゼンテーションを経営や現場に対してするときに、「プロジェクトの成果物に、必ず人の成長が入っていなければならない」というメッセージを打ち出しました。プロジェクトを通じて個人とチームが成長しなければ、変化にとって重要な3つのP(Policy、People、Process)のうちのPeopleの質が上がっていかない、ということは強調しましたね。3つのPのうち、どれかが欠けても本質的な変化にならないのですよ。最悪、プロジェクトが炎上して失敗するか、うまく行っても元に戻るか――という、妥協した内容になる。
システムは全体の一部でしかないと思うのですよ。プロセスの一部でしかない。システムを導入・運用・改善していくのは結局、人です。くどいようですが、一番重要なのは人なのだと思っています。
白川氏 経営者にとって社員の成長は大きな関心事なので、そういうメッセージは受け止めてくれますよね。単に「データがこうなって、システムがこうなってコストが下がります」と言うだけより響くし、大事なメッセージだと思います。
ところで今、大きな山を越えてヒマじゃないんですか?
中野氏 それが全然ヒマじゃないんですよね(笑)。システムが最低ライン入っただけで、中身が全部入り切っていないから。家でいうと整地して柱を立てたけど、内装はまだまだみたいな。それに社内を見回すと課題はたくさんあります。それに、海外展開を考えると、まだまだ根本的に直さないといけない部分も多いです。
システムはかなりきれいに統合できたと思うのですが、3つのPを運用するための組織体制や人材教育もまだ道半ばですし、そもそもグローバルを前提とした会社の制度や規定をきちんと見直せているか、といったようなところも、本当にこれからという感じです。
BPR(Business Process Re-engineering)は、本当はこうしたところが全部変わっていくことが大事なのですが、全方位へのシステム刷新を突貫でやるみたいなところがあったので、まだまだ足りていない部分もあります。PeopleとPolicyは変化するのに時間がかかりますね。特に人は、システムと違って少しずつ変わっていく。
1年半でWorkdayの人事と財務の運用はできるようになったので頑張ったとは思いますが、グローバルで戦う会社と肩を並べるほどになったかというとまだまだこれからですね。世界で戦って勝っている会社は、舞台裏も本当に良くできていると感じます。本当に手を抜いてない。悔しいですけど、話を聞けば聞くほど実力差を思い知らされる。それでもほんのちょっとだけ背中が見えたかな? という感じです。
【後編に続く】
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