コーヒーとお茶のあいだに“新しい飲み物”を 「麦のコーヒー」は定着するか:ソルティライチに次ぐ商品に(2/2 ページ)
キリンビバレッジが7月に発売した「世界のKitchenから 麦のカフェ CEBADA(セバダ)」。スペインの食文化をヒントに開発した、麦を使った飲み物だ。日本になじみのない文化をあえて取り入れ、提案するのはなぜだろうか。
「日常の台所」を体感して得た“発見”
「ブランド立ち上げ当初は、現地取材も飛び込みでやっていたんですよ」とブランドマネージャーの菅谷恵子氏は振り返る。「ピール漬けハチミツレモン」の取材時、イタリアで「レモンのピール漬けを上手に作れる人を知りませんか?」と聞いて回った。数日後には、「レモンの日本人がまた来た」と現地でうわさになったという。
「すぐに手に入る観光情報ではない、“日常の生活”に関することは、取材しないと分かりません。現地では当たり前でも、私たちには新鮮。そういうものを見つけることを大切にしています」(菅谷氏)
そのため、レシピを調べてそのまま日本に持ち帰るのではない。“日常の台所”を体感して得た発見や学びを商品開発に生かす。今回のセバダの場合、大麦の麦芽を深煎りして粉砕したものをドリップする、という基本の作り方を直接教えてもらう中で、ある発見があった。「レモンなどのかんきつ類を入れていることに気付きました」(後藤氏)
これをヒントに、現地で味わうようなおいしさを引き出す“隠し味”を探った。会社の近くにある専用キッチンで後藤氏が自ら試作し、かんきつ類や他の果物、さらにはマヨネーズなどの一味違った食材を試してみたという。その結果、レモンをほんのりと効かせることで、麦の香ばしさや甘みを引き立たせることができた。
また、日本人の味覚や文化に合わせることも意識した。現地では砂糖やミルクを入れることが多いが、日本では「無糖茶文化」が浸透しており、麦茶に砂糖などを加えることはあまりない。そのため、シンプルなブラックの味に仕上げた。
カフェインゼロで「私にはちょうどいい」
コーヒーではなく、麦茶でもない。不思議な位置付けのセバダによく反応しているのは、カフェインの量を気にする人たちだ。近年、カフェインを減らしたデカフェなどの商品も増えており、関心は高まっている。「30〜40代の女性を中心に、『私にはちょうどいい』という声をいただいています」(後藤氏)。病気などでコーヒーを飲めなくなった人たちからの反響もあるという。
一方、コーヒーの味わいを求める男性などからは「麦茶のようだ」という声もある。「ぴったり合う人もいれば、そうでない人もいると思います。でも、この商品をきっかけに、まずはセバダという飲み物を知ってもらえる。いずれは新しいジャンルとして定着させて、商品ラインアップを広げていきたいです」(後藤氏)
菅谷氏は「ブランドとして発信しているのは“家庭的な健康感”。セバダがソルティライチに次ぐ商品になれば」と期待する。よく知っている素材でも、視野を広げると全く新しい味になる。コーヒーでもお茶でもない、新たな選択肢の一つになるだろうか。
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