新ターミナル完成も……客のいない粟国空港 「島の生命線」再開を願う切実問題:運航見通し立たず
沖縄県粟国(あぐに)空港で第一航空の那覇〜粟国便が着陸に失敗し、乗客10人がけがをした事故から3年が過ぎた。今年5月、乗客の待合所となるターミナルが新調されたが空路は絶えたままだ……。
2015年8月、沖縄県粟国(あぐに)空港で第一航空(本社・大阪)の那覇〜粟国便が着陸に失敗し、乗客10人がけがをした事故から8月28日、3年が過ぎた。今年5月、乗客の待合所となるターミナルが新調されたが空路は絶えたまま。村民は「器は整った。後は中身」と飛行機の早期再開を望む。(南部報道部・堀川幸太郎)
1978年建設の旧ターミナルの老朽化に伴い、県が約1億9000万円で建て替えた。2013年度に計画、16年度から使う予定だった。入札不調で2年遅れてオープンした今、冷房が効き、ラジオの流れる待合所に客はいない。
新城静喜村長は「いいターミナルができて活気づくと思っていた」と話す。第一航空の運休中に代役を担ったヘリが今年6月に海上墜落したことに触れ「3年間で2度も事故が起き、空の足がなくなるとは思ってもみなかった」とこぼす。航空便の運航見通しは立たず、ヘリは早くても10月まで再開しない予定だ。
今、島と那覇を結ぶのは片道約2時間10分の村営フェリーだけ。飛行機よりも悪天候に弱く欠航しがち。台風続きの今年は4月から8月28日現在、27往復欠航した。昨年同期比の3倍以上だ。
利便性を上げようと8月からは毎日1往復だったフェリーを金、月曜日は2往復にした。午前に夫婦で粟国に帰省、夕方に日帰りした南風原町の農家、大城勝江さん(56)は「帰省の10時間中、船で往復4時間以上過ごす。飛行機は40分。島のために早く再開させてほしい」と切望した。
今年は島づくりの先行きを占う村議選もあり、9月4日告示、9日投開票される。沖縄タイムスのアンケートで、公約・最重要課題3つの中に「交通網の整備」を選んだ立候補予定者の1人は「定期的に飛ぶ飛行機は島の生活を支える生命線。議論を広めたい」と話した。
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