人の気持ちが分からないダメ管理職はAIに取って代わられる:マネジメントの達人に聞く(3/4 ページ)
優れたマネジャーと駄目なマネジャーの違いとは何だろう? プルデンシャル生命保険で伝説のマネジャーと呼ばれ、『25年間「落ちこぼれチーム」を立て直し続けてわかった マネジャーとして一番大切なこと』の著者でもある八木昌実氏が組織マネジメントの本質を語ってくれた。
肩書きに人はついてこない
よくメンバーに教えていたことの1つが仕事のやり方、考え方です。
仕事というのは作業的なものが大半を占め、重要ではないけど緊急というのが多いのです。例えば、上司から電話がかかってきて、すぐに報告書を出せとか、プレゼンのための資料を作れとかです。
けれども、重要な仕事はそれではありません。優先順位をつけて重要かつ緊急な仕事に取り組まないと、作業に追われるだけになります。こういうことに1日を費やしていても、前に進むことができません。
私は、仕事というのは、結果や目標に直接つながるものだと考えています。難しいし、やりにくいけれども、それが片付いたときには自分たちの組織の目標達成につながる、そういった仕事から手を付けていくべきです。そうでなければ、作業だけで1年が過ぎてしまいます。実際にそういうビジネスパーソンは多いです。ああ、今年も忙しかったと言うけれど、あなたは直接結果につながる仕事をやったんですかと聞きたい。
ただし、マネジメントする立場においてここで大切なのは、組織のメンバーとのコミュニケーションの取り方です。生まれも育ちも、家庭環境も、メンバーは皆違います。それを十把一絡げで全員に同じやり方をして、成果を出そうとしても無理です。一人一人が何を考え、何を大事にしながら仕事をしているのかを知った上でコミュニケーションを取らなければなりません。
ところが、駄目なマネジャーは、日ごろからメンバーの誰とも対話していないのに、「会社の方針はこうだ。こうしろ!」と言うわけです。メンバーにとってみれば、このマネジャーは自分のことを分かっていないと思っているので、いきなり方針を押し付けられても腹が立つし、偉そうにしてるなら引きずり下してやろうと思うわけです。これは人間のごく自然な反応ですよ。
人の心が分からない人にマネジメントは難しいです。メンバーに何かしてほしいと思うのであれば、まずは自分から皆のところに下りていって、きちんとコミュニケーションを取る。そこからです。世の中のマネジャーには一流大学出身だったり、MBAを取得していたりと、優秀な人も多いのでしょうけれど、人の気持ちが分からないのであれば、人間的には相当頭が悪いですよ。肩書きに人はついてきません。
普通の人は、情緒があって、雰囲気に影響されます。彼らがやる気になってくれなければ組織は動きません。人間には感情があるのです。この人が言うのなら、こんなに一生懸命やってくれてるなら、私も頑張ろうと思うわけです。
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