わが家をとりこにした西表島の仙人:内田恭子の「日常で触れたプロフェッショナル」(2/5 ページ)
旅行といえば海外にしか目が向かなかったわが家が、沖縄・西表島の魅力にとりつかれたのは2年前のこと。今年のGWも西表に。その理由の1つには、現地で出会ったある人の存在が……。
仙人との出会い
その日の夜は、知り合いから紹介してもらったガイドさんとともに夜のジャングルツアーへ。長男はまだ熱があったものの、ちょっと強行にいざ皆で出発。
ホテルのロビーに行くと、森本さんという名の仙人が私たちを待っていた。冗談じゃなく、本当に仙人そのものだった。ツヤツヤに日焼けした肌、きゅっと引き締まった顔に長い白いひげ。年齢不詳。短パンからのぞく足も細くて野生の動物みたいに速そう。体に無駄なところが一切ないとはこういうことか。そして目は鳶色に深い緑がかかったような色で、不思議な雰囲気を醸し出している。これが今夜のツアーのガイドさんだ。
仙人に言われるがままバンに乗せられ、美しすぎる夕焼けの中をジャングルへ出発。この森本さん、実は西表島で自然保護に尽力されている、島を愛する素晴らしい方。とりわけイリオモテヤマネコを守るために、島中に立てられているヤマネコ注意の看板はほとんど森本さんが作られたもの。最近は観光客の増加などにより交通量が増え、ヤマネコの交通事故が年々増えているらしい。おかげで当時3歳の次男がすっかりヤマネコファンになってしまい、いまだに東京からヤマネコたちの減少に心配を寄せている。
さらに西表島のエキスパートとして、テレビ局などの対応も森本さんがすることが多いとのこと。つまり、島のことはだいたい森本さんに聞けば分かるのだ。車中にもたくさんの珍しい貝殻が積んであり、運転中もひとつひとつ丁寧に説明してくれる。
森本さんの風貌もさながら、彼にすぐに惹きつけられたのは、大人も子どもも関係なく接してくれるところ。子ども扱いはしない。子どもたちの少々トンチンカンな質問にも、誠意をもって丁寧に答えてくれる。結果、子どもたちは少し難しい話でもじっと森本さんの言うことに聞き入って、そこから何かを学ぼうとしている。いつもは私の言うことなんかろくに聞きもしないのに……。森本さんの話には耳を傾け、それをずっと覚えているから不思議だ。
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