リンガーハットに新工場建設を決断させたモヤシへの情熱:モヤシだけ自社生産(2/3 ページ)
リンガーハットは2019年6月の稼働を目指し、モヤシを製造する新工場を建設する。実は、ちゃんぽんに使う野菜の中でモヤシだけは自社生産しているのだが、その背景には商品力向上に向けた強い情熱があった。
モヤシを自社生産する理由
モヤシを自社生産する理由についてリンガーハットの広報担当者は「フレッシュさを保つため」と説明する。
同社では、野菜を契約農家から仕入れたあと自社工場で加工し、全国の店舗に向けて毎日配送している。モヤシは鮮度が落ちると歯ごたえが徐々に落ちてしまうため、収穫してから配送するまでの時間を短くするために自社生産しているのだ。また、自社工場で生産することでちゃんぽんに適した「品質の高い(太くて根が短い)」モヤシをお客に提供できるメリットもある。
モヤシの製造方法を改革する
新工場建設のもう1つの目的は、「モヤシの製造方法自体を抜本的に変更するため」(広報担当者)だ。現在、モヤシの製造工程の多くは手作業に依存しているという。例えば、「発芽したモヤシを栽培室に運ぶ」「成長したモヤシの根切をする」といった作業のほとんどは工場の従業員が行っている。
現在の体制を維持したままでは、生産性の劇的な向上が見込めないばかりか、製造工程で菌が混入するリスクを低減しにくい。新工場では自動化を推進することで、これらの問題解決を目指すという。
菌が入るとどのような問題があるのだろうか。モヤシは1週間程度で収穫できる状態に育てられるが、非常にデリケートな野菜である。生産の過程で菌が混入すると、色が黒くなったり、細くなったりしてしまうため、食用に適さなくなるという。工程に人の手が入らないようにすることで、菌が混入するリスクを避けられるというわけだ。
このように、ちゃんぽんの商品力向上とコスト低減への強い“情熱”がリンガーハットに新工場の建設を決断させたのである。
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