仕事と家庭を両立できないビジネスマンが陥る「言わなくても分かるよね?」のワナ:銀河英雄伝説からビジネスリーダーは何を学ぶべきか?(2/3 ページ)
家庭の失敗が仕事にも悪影響を与えてしまう。そんな経験をしたビジネスパーソンは少なくないだろう。では、そうならないために一体どうすればいいのだろうか?
「言わなくても分かるよね?」はビジネス現場でもNG
そこで、銀河英雄伝説の主人公の1人であるヤン・ウェンリーが彼の被保護者であるユリアン・ミンツに対して話したセリフを紹介しましょう。
言葉では伝わらないものが確かにある。だけど、それは言葉を使いつくした人だけが言えることだ。だから言葉というやつは、心という海に浮かんだ氷山みたいなものじゃないかな。海面から出ている部分はわずかだけど、それによって海面下に存在する大きなものを知覚したり感じとったりすることができる。言葉をだいじに使いなさい、ユリアン。そうすれば、ただ沈黙しているより多くのことをより正確に伝えられるのだからね。
ヤン・ウェンリー
前述したように、「言わなくても分かるよね?」というフレーズは、ほとんどのケースで功罪となり、ヤンが言うところの「海に浮かんだ氷山」となり得ます。どれだけ近しい間柄でも、所詮は他人です。他人の思想を完全に理解することはほぼ不可能ですから、しっかりと誤想のないように言語化し、正直に伝え、相互に理解し合う。もしくはどうしても譲れないものがある場合は、双方がどこかで妥協し、折衷案を提示した上でお互いにその内容に対してコミットする必要があります。
ただ沈黙してお互いに分かったつもりでいるよりも、多少の気難しさや煩わしさが伴ったとしても、双方が思っていること、感じていること、望んでいることをしっかりと言葉にして合意することで、多くのことを正確に伝えられる、共有することが可能になるはずです。
これはビジネス現場においても大切なことです。
ビジネスを推し進める上で、さまざまな事象に遭遇しますが、「言わなくても分かるよね?」と見受けられるフレーズを無意識に使ってはいませんか?
- 普通は……
- 当たり前……
- 一般的には……
- 俺だったら……
これらはビジネス上で利用してしまうと多くの誤解や誤認識を発生してしまう、いわば使ってはいけないフレーズの一覧です。
代表例として「普通」を取り上げましょう。
普通とは一体何でしょう? 普通の定義は個々人がそれぞれの人生の中でこれまでに得てきた知識や経験値に依存した物差しです。そのため、普通と伝えたとしても、普通の定義は個々人の解釈に委ねられてしまいます。
となると、「普通だったらこうだよね」「普通だったらこのくらいのクオリティで仕事をするよね」「普通はこういうとき残業するよね」といったことが万人に思った通りに受け取られると思うほうが誤りです。前述のヤンのフレーズ然り、言葉をしっかりと使い、伝えることが重要と言えます。
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