次はシャイニングマンデー? 定着に向けた課題は:利用率低いプレミアムフライデーだが(2/2 ページ)
「プレミアムフライデー」に続いて、経産省が新たに始めようとしているのが月曜午前を休もうという「シャイニングマンデー」だ。プレミアムフライデーは極めて利用率の低い施策だったが、果たして今度は定着するのだろうか?
就業者の8割以上は勤め先で導入されなかったと回答しており、大半の企業は導入を躊躇(ちゅうちょ)していたようだ。「プレミアムフライデー」で消費者の行き先となる飲食店やデパートでは、むしろ人手が必要となってしまうし、そもそも仕事量を減らさずに早帰りだけを促進することは難しいためだろう。
勤め先で導入されたが利用しなかったと回答した者に対して、その理由をたずねたところ、民間企業全体では「特に意識していなかった」が過半数を占めて最も多く、次に「仕事が終わらなかった」、「後日仕事のしわ寄せが来る気がした」と続いていた。
利用しなかった理由は雇用形態によって違いがあり、正規雇用者では「仕事が終わらなかった」や「後日仕事のしわ寄せが来る気がした」が多く、非正規雇用者では「特に意識していなかった」や「収入が減ってしまうのが嫌」が多い。正規雇用者は、やはり仕事が減らないと早帰りは難しいようだ。
一方で非正規雇用者は、それぞれの組織における制度の導入の仕方にもよるが、そもそも施策の対象となっていないケースも多かったのかもしれない。また、時間給で働いている場合は収入が減ってしまうため、むしろ休みたくないという声もある。
「プレミアムフライデー」、そして、「シャイニングマンデー」は、今後、定着するのだろうか。
「プレミアムフライデー」の調査結果を見ると、定着させるためには業務の生産性向上とセットで進める必要がある。「働き方改革」が推し進められているところだが、仕事量が減らないことには、他の日の残業につながりかねない。
また、業種や職種によって繁忙期は異なるため、実施日の更なる柔軟性が必要だ。その点で言えば、「プレミアムフライデー」のみで促進するよりも、「シャイニングマンデー」を合わせた方が効果は上がるだろう。さらに、金曜午後や月曜午前にこだわらずに、同じ会社であっても部署ごとに休みやすい日に休むなど柔軟に実施することができれば利用率は上がるのかもしれない。
可処分所得を引き上げる必要もあるだろう。景気は回復基調にはあるが、労働者一人当たりの実質賃金は伸び悩んでいる。また、高齢化が進む中で、生活者全体で漠然とした将来の経済不安が漂っている。消費を喚起するためには「働き方改革」と合わせて所得の引き上げも必要だ。
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