ボーイングが挑む新たな宇宙ビジネス:宇宙ビジネスの新潮流(1/2 ページ)
航空大手の米Boeingがベンチャー企業の買収を進めている。しかし、彼らが宇宙ビジネスに対して積極的に動いているのはそれだけにとどまらないのだ。
航空大手米Boeingがベンチャー企業の買収を進めている。それだけではない。宇宙飛行士の宇宙ステーションへの輸送サービス開発や地球規模の衛星インターネット網構築を計画するなど、新たな宇宙ビジネスに積極的に動いているのだ。
ベンチャー投資を積極的に推進
Boeingは2017年にコーポレートベンチャーキャピタル部門として「Boeing Horizon X」を設立した。有望な技術を有するベンチャー企業に投資して、航空宇宙領域に活用するのが狙いだ。対象領域は自動化システム、3Dプリンタ、エネルギー、データストレージ、次世代素材、AR(拡張現実)、機械学習、極超音速エンジンなど極めて幅広い。
今年3月に同部門による米国外初の投資案件として話題を集めたのが、豪Myriota社だ。同社は15年に南オーストラリア大学からスピンオフしたベンチャー企業であり、超小型衛星を活用したIoT(モノのインターネット)向けに、低コストのナローバンド通信システムを構築すべく、省電力かつ超小型な送信デバイスと通信技術を開発している。
さらに9月にはデンバーに拠点を構える米BridgeSatに投資を行った。15年創業の同社は、衛星が取得するデータの増加と無線周波数帯のひっ迫に着目して、衛星と地上の間に光通信システムを適用しようとしている。そのために光通信に対応する地上局と衛星に搭載するターミナルを開発中であり、将来的には低軌道に中継衛星群を打ち上げることも計画している。
新たな領域に適応していく
並行してBoeing本体も投資を進めている。今年8月には小型衛星ソリューションプロバイダの米Millennium Space Systems社の買収を発表した。Millenniumは01年設立した企業で、50〜6000kgを超える衛星までの開発実績を有しており、安全保障系の政府機関が主要顧客だ。
このように昨今ベンチャー企業への投資を加速させているBoeingだが、その背景に何があるのだろうか。
同社は主に大型衛星市場におけるリーディングカンパニーである。他方で衛星市場は近年、小型衛星を中心に、新たなベンチャー企業が多数誕生しており、イノベーションが加速している。民間企業はもちろんのこと、同社の主要顧客である政府系機関も注目をしている。
実際、Millennium Space Systems社を買収した際にも、自社の既存衛星ラインアップと同社の小型衛星ソリューションを組み合わせることでさまざまな顧客ニーズに対応可能と考えているとのコメントを発表している。このように新しい領域への対応を進めているのだ。そうした動きは衛星分野にとどまらない。
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