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ドンキ創業者が自伝に記した「金銭欲と名誉欲」:急成長の秘密を探る(4/5 ページ)
ドンキの創業者はたった一代で巨大なチェーンを築いたが、その原動力はどこにあるのか。“きれいごと”抜きの感情を素直に吐露した自伝から読み解いていく。
ドンキはなぜ嫌われたのか
1990年代後半、ドンキは“嫌われ者”だった。『安売り王一代』によると、1999年6月に開業したドン・キホーテ五日市街道小金井公園店(東京・西東京市)に対し、地域住民は夜間騒音解消のため、深夜営業を中止するよう申し立てた。さらに、同年5月に開業したドン・キホーテ東八三鷹店などにも同様の反対運動が飛び火し、マスコミがこぞって取り上げた。安田氏は当時の状況を「まるで全ての住民が出店に反対し、ドンキのお客様は全員が暴走族であるかのような報道ぶりである」と振り返っている。現在も、SNS上では「ドンキの客はヤンキーが多い」「客の品がよくない」といった書き込みが散見される。
なぜドンキはここまで嫌われるのか。もちろん、深夜営業が引き起こす騒音問題が深刻だったという理由もあるだろうが、記者は別の理由もあるのではないかと考える。それは、ドンキの品ぞろえや店舗の雰囲気が醸し出す「むき出しの欲望」に対する嫌悪感だろう。
例えば、ドンキには男性用の精力剤や筋トレグッズ、女性用のブランドバッグや美容品が所狭しと並ぶ店舗がある。これは、「異性にモテたい」「カッコよくなりたい」という顧客の潜在的な欲望が、むき出しになった状態ともいえる。この陳列を見て面食らった地域住民も多かっただろう。なぜなら「自分の欲望は隠して当たり前」「本音より建前を大事にするのが人間社会の潤滑油」という価値観とは真逆の世界が、近所に出現したからだ。
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