ドンキ創業者が自伝に記した「金銭欲と名誉欲」:急成長の秘密を探る(3/5 ページ)
ドンキの創業者はたった一代で巨大なチェーンを築いたが、その原動力はどこにあるのか。“きれいごと”抜きの感情を素直に吐露した自伝から読み解いていく。
顧客に向き合うことは自分の欲望に向き合うこと
ドンキの戦略が顧客に受け入れられた背景には、自分の欲望と素直に向き合う安田氏の姿勢が関係しているように思われる。
「インサイト」というマーケティング用語がある。これは、簡単にいうと「顧客の潜在的な欲望や欲求」を意味する。マーケティングにおいては、このインサイトを見抜き、ビジネスチャンスを創出することが求められる。例えば、男性用の整髪剤を売り出す際、マーケティング担当者は、顧客が「女性にモテたい」と潜在的に考えていると判断し、キャッチコピーや販促計画を考えるといった具合だ。
かつて、記者はあるコンサルタントから「一流のマーケティング担当者は自分の欲望を直視することができる」という話を聞いたことがある。「異性にモテたい」「金持ちになりたい」「人から尊敬されたい」――こんな欲望を抱いていることを周囲に知られると“ドン引き”されることが多い。それゆえ、多くのビジネスパーソンは自分の正直な気持ちに気づいていても、直視しようとしない。そのコンサルタントは、自分の欲望を直視できる人が、顧客の欲望を理解することができ、効果的なマーケティングができるという趣旨の発言をしていた。
お客の心理を読み解く勘と感受性
安田氏はドンキを創業する前、「泥棒市場」というディスカウントストアをオープンし、傷モノや廃番品といった“訳あり商品”を仕入れて販売していた。POPの内容は「もしかしたら書けないかもしれないボールペン1本10円!」といったように、遊び心にあふれるもので、顧客は面白がって購入していたという。顧客の心に刺さる商品を仕入れて販売するノウハウはドンキの強みの1つだが、その根底にあるのは、顧客の潜在的な欲望を見抜く“目”だったのではないだろうか。安田氏は『安売り王一代』において、顧客の心理を読み解いて店づくりに生かすには勘と感受性だが、このセンスは一朝一夕には身につかないと記述している。
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