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ドンキ創業者が自伝に記した「金銭欲と名誉欲」:急成長の秘密を探る(2/5 ページ)
ドンキの創業者はたった一代で巨大なチェーンを築いたが、その原動力はどこにあるのか。“きれいごと”抜きの感情を素直に吐露した自伝から読み解いていく。
劣等感にさいなまれた学生時代
安田氏は1949年、岐阜県大垣市に生まれた。子どものころはわんぱくなガキ大将だったが、高校生になると東京生活に憧れるようになった。安田氏は父親から「難関校に合格したら上京してよい」と言われ、猛勉強の末、慶應義塾大学法学部に合格した。
『安売り王一代』によると、上京した安田氏は強い劣等感にさいなまれることになる。同級生が自分の車を所有していたり、立ち居振る舞いが洗練されていたりするのに対し、自分が「田舎のイモ兄ちゃん丸出しで、何のコネも取り柄もない貧乏学生」だったからだ。
そこで安田氏は「ビッグな経営者になって、いつか見返してやろう」と誓うようになる。これが、起業を志すようになった単純明快な理由だと安田氏は記している。
自分の欲望を飾ることなく吐露する
『安売り王一代』の大きな特徴は、安田氏が自分の素直な気持ちや欲望を隠すことなく記述していることだ。それは「私は俗な欲求と羨望(せんぼう)、嫉妬にまみれた人間だ。しかし、この俗っぽい欲求、すなわち金銭欲と名誉欲が原動力となってドン・キホーテが生まれ成長したこともまた、厳然たる事実だ」という文章に端的に表れている(ちなみに、本人はこれらの感情を現在は克服したと本書に記述している)。
「金もうけは悪いこと」という価値観が根強く残っている日本にあって、創業者は自分のありのままの欲望を隠そうとするのが常だが、安田氏はまったく逆の姿勢なのだ。
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