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自動運転路線バス、試乗してがっかりした理由杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)

小田急電鉄が江の島で実施した自動運転路線バスの実証実験。手動運転に切り替える場面が多く、がっかりした。しかし、小田急は自動運転に多くの課題がある現状を知ってもらおうとしたのではないか。あらためて「バス運転手の技術や気配り」の重要性も知った。

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 江の島を出ると、江の島大橋は歩車分離式の片側1車線の車道になる。ここは自動運転で快走する。江の島入り口交差点で左折までは自動運転。しかし、混雑している折り返し地点は手動運転だった。帰りに交差点を右折して江の島大橋に差し掛かるまでは手動運転である。自動運転らしい振る舞いは江の島大橋の上だけだ。その橋の上で、先行する自転車を追い越す場面があったが、ここもやはり手動運転だった。

 この自動運転バスの試乗会には多くのメディアが参加していた。それらが報じた内容が興味深い。「従来のバスと同じ乗り心地」、そりゃそうだ。走行系統や内装は従来のままだ。「従来のバスと変わりない走り」、ほとんど手動運転だから当然だ。皮肉か。いや、彼らは私よりずっとバスや自動運転に詳しいのだろう。その上で肯定しているのかもしれない。でも、それは情報の受け手に対して説明不足ではないか。ちなみに、当日は親しくしている通信社の記者が来ていたが、私と同じ感想だった。

photophoto フロントバンパーに設置されたセンサーとカメラ(左)、従来のバスとほぼ同じ運転席には、自動運転のモニター装置が設置されていた(右)
photo
通行帯を守り、客待ちのタクシー横を通り過ぎる

試乗会の真意は「現状を知ってもらうこと」か

 江の島は2020年の東京五輪でセーリング競技の会場となる。小田急電鉄と系列の江ノ電バスは、このときにバス路線で自動運転を実施し、日本の技術を世界にアピールする意向だ。しかし、上記のように現状では混合交通に対応できない場面が多い。自動運転バスを運行する場合は、道路を閉鎖したほうがいい。そうなると混合交通に対応した自動運転バスではないわけで、悩みどころだろう。

 自動運転バスの実証実験は小田急電鉄、小田急グループの江ノ島電鉄が行った。技術的なサポートはソフトバンクグループのSBドライブが参加する。また、神奈川県は「ロボット共生社会推進事業」を推進しており、自動運転バスにおいても連携している。

 SBドライブは自動運転バスのシステムを完成させ、多くの路線で採用させれば利益になる。神奈川県はロボットが社会に溶け込み、生活を支えるパートナーとして活躍する「ロボットと共生する社会」の実現に向けた取り組みを推進している。どちらの話も理想が高い。実現させる未来は遠いかもしれないけれども、諦めてはいけない。

photophoto 車内にはセンサーやカメラからの情報を表示、車両や人の検知状況が分かる(左)。車内外の様子をコントロールセンターで受信している(右)

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