自動運転路線バス、試乗してがっかりした理由:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)
小田急電鉄が江の島で実施した自動運転路線バスの実証実験。手動運転に切り替える場面が多く、がっかりした。しかし、小田急は自動運転に多くの課題がある現状を知ってもらおうとしたのではないか。あらためて「バス運転手の技術や気配り」の重要性も知った。
あらためてバス運転手の高度な仕事ぶりを知る
待ったなしの状況の中で、自動運転の開発は急務。運転手不足はバスだけではなく、鉄道でも始まりつつある。2017年9月、日経ビジネスが「鉄道の自動運転 JR東日本が始動」と特報を打った。また、読売新聞は8月13日付で「山手線や東北新幹線、自動運転検討…運転士不足」と、JR東日本が電車の自動運転に取り組んでいると報じた。この記事は現在は削除されているようだ。
JR東日本も公式Webサイトの「技術革新中長期ビジョン」で自動運転に触れているし、2015年に東京大学生産技術研究所教授の須田義大氏を招いて講演会を開催した。また、12月からはBRT(バス高速輸送システム)路線でバスの自動運転の技術考証を実施する(プレスリリース)。
自動運転技術は必要だ。開発は続けるべきだ。しかし運用に関しては慎重にならざるを得ない。今回の江の島の実証実験で、あらためて「バス運転手の技術や気配りの重要性」を知った。江の島と短い橋の上は、駐車車両や低速の自転車、バスを追い越す乗用車、動きを予測しにくい歩行者など、混合交通の縮図だった。
普段乗っているバスを振り返れば、車内の乗客への配慮も必要だ。ネットで検索すると、乗客同士のトラブルを気配りで解決してくれたバスドライバーの目撃談がいくつか見つかる。今回の自動運転バスでは、乗客の姿勢を検知し、走行中に立ち上がる客に注意喚起の自動放送を流す仕組みがあった。また、乗客の不穏な動きをチェックして、コントロールセンターから監視する仕組みもある。居眠り、寝過ごしも警告してくれるかもしれない。しかし、自動運転バスは酔客や痴漢にどう対処するのか。異常を認知してから警備員を派遣していては、初動が遅くなる。
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