ネスレ日本が宅配事業に参入 商品を配達するのは一般人!?:輸送コスト増に奇策で対抗(2/2 ページ)
ネスレ日本が佐川急便と組んで宅配事業に参入。一般人に宅配の中継になってもらいユーザーに配達したり逆に取りに来てもらう。急増するネット通販の配達コストを削減する。
配送コスト、ネット通販の足かせに
ネスレ日本の商品の定期購入者は約90万人に上る。通常配送からマチエコ便への移行を促していくほか、エコハブを担ってくれる人も積極的に募る方針という。同社の高岡浩三社長は「タクシー業界でいうUber方式を取った」と説明する。
ネスレ日本はこれまでも一般人に商品を広めてもらうアンバサダーマーケティングや無料でDNA検査ができるサービスなど、ユニークな施策を打ち出してきた。今回の宅配事業への参入について高岡社長は「ネスレ日本では今、商品や売り方ではなくサプライチェーンが問題になっている」と説明する。
高岡社長によると同社は2017年までヤマト運輸に商品の配送を委託してきたが、同社は大口顧客であるアマゾンジャパンに配送業務を集中せざるを得なくなっていた。ネスレ日本はヤマト運輸と契約を打ち切って佐川急便などに委託先を変更したが、ネット通販の需要増に運輸業界の配送能力が追い付かずコストも上昇していたという。
インスタントコーヒーなど家庭用の市販製品が冷え込む中、ネスレ日本の重要な成長の柱となってきたのがネット通販だが、膨れ上がる配送コストがその足かせとなってきた。高岡社長は「eコマース事業はこれまで40〜50%の成長を達成したが、2018年は25%とあえて低い伸びを設定した」としており、新サービスへの投資を通じて配送コストの抜本的な改善を図る考えだ。マチエコ便の普及で配送コストはおよそ半分に減るとみる。
地域の元気な高齢者がエコハブを担うことで新たな収入源を得られるほか、商品の受け渡しを通じて住民同士の交流が深まり「地域のちょっとした見守り(活動)になる」(高岡社長)といった効果も見込む。
職場にコーヒーマシンを置いてもらい、一般人にコーヒーの販促を無料で担ってもらうアンバサダーマーケティングで大きく売り上げを伸ばしてきたネスレ日本。今回は人手不足の最も深刻な業界である配送で一般人を“巻き込む”作戦に出た。メーカーの枠を超えた奇策が果たしてうまくいくか注目が集まる。
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